呻吟語 / 内篇・修身・大事難事は擔當を看る
大事難事看擔當,逆境順境看襟度,臨喜臨怒看涵養,群行群止看識見。
新字:大事難事看担当,逆境順境看襟度,臨喜臨怒看涵養,群行群止看識見。
書き下し
大事難事は擔當を看、逆境順境は襟度を看、喜に臨み怒に臨むは涵養を看、群行群止は識見を看る。
現代語訳
大きな事や難しい事では、その人の引き受ける力を見ます。逆境と順境では、その人の胸の広さを見ます。喜びに臨み怒りに臨む時には、その人の養いを見ます。大勢と共に動き共に止まる時には、その人の見識を見ます。
解説
人を見る四つの場面と、それぞれで測る中身を並べた一段です。難事では覚悟、境遇では度量、感情では養い、集団では見識。どれも普段の会話では見えず、その場面が来たときにだけ表に出るものばかりです。とくに最後が効いていて、みなが動くときに一緒に動き、止まるときに一緒に止まる、その判断に見識が出る。呻吟語でよく引かれる一段です。
この章句が説くこと
人物担当度量涵養見識
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・量は六合の隘きを嫌ふ量は六合の隘きを嫌ひ、身は五岳を負ふも輕し。
-
説苑・尊賢斉の桓公庭燎を設け、士の造り見えんと欲する者の為にす。期年にして士至らず。是に於いて東野の鄙人に九九の術を以て見えんとする者有り。桓公曰く、「九九何ぞ以て見ゆるに足らんや」と。鄙人対えて曰く、「臣九九を以て見ゆるに足れりと為すに非ず、臣聞く、主君庭燎を設けて以て士を待つも、期年にして士至らずと。夫れ士の至らざる所以の者は、君は天下の賢君なり、四方の士、皆自ら論ずるに君に及ばずと以て、故に至らざるなり。夫れ九九は薄能のみなるに、而れども君猶お之を礼す、況んや九九より賢れる者をや。夫れ太山は壌石を辞せず、江海は小流を逆えず、大を成す所以なり」と。詩に云う、「先民言える有り、芻蕘に詢う」と。博く謀ることを言うなり。桓公善しと曰いて、乃ち因りて之を礼す。期月にして四方の士、相携えて並び至る。詩に曰く、「堂より基に徂き、羊より牛に徂く」と。内を以て外に及び、小を以て大に及ぶことを言うなり。
-
『呻吟語』内篇・應務・一葉の滄海に泛ぶが如し聖賢の量は空闊なり。事の胸中に到るは一葉の滄海に泛ぶが如し。
-
『呻吟語』内篇・應務・度量寬弘なれば受用の處有り世間に一處として拂意の事無きは無く、一日として拂意の事無きは無し。椎だ度量寬弘なれば受用の處有り。彼の局量褊淺なる者は空しく自ら懊恨するのみ。
-
説苑・復恩楚の荘王群臣に酒を賜ふ、日暮れて酒酣にして、燈燭滅す、乃ち人の美人の衣を引く者有り、美人其の冠纓を援絶して、王に告げて曰く、「今者燭滅え、妾の衣を引く者有り、妾其の冠纓を援け得て之を持てり、趣かに火を来して上げしめ、纓を絶ちし者を視られよ」と。王曰く、「人に酒を賜ひ、酔ひて礼を失はしめしに、奈何ぞ婦人の節を顕して士を辱めんと欲せんや」と。乃ち左右に命じて曰く、「今日寡人と飲みて、冠纓を絶たざる者は懽ならず」と。群臣百有余人皆其の冠纓を絶ち去りて火を上ぐ、卒に尽く懽びて罷む。居ること三年、晋楚と戦ふ、一臣常に前に在り、五合五たび奮ひ、首として敵を卻く、卒に之に勝つを得たり、荘王怪しみて問ひて曰く、「寡人徳薄く、又未だ嘗て子を異にせざるに、子何の故に死に出でて疑はざること是の如きか」と。対へて曰く、「臣当に死すべかりき、往者酔ひて礼を失ひしとき、王隠忍して誅を加へざりき、臣終に敢へて蔭蔽の徳を以て王に顕報せざらんや、常に肝脳を地に塗り、頸血を用ひて敵に湔がんことを願ふこと久し、臣乃ち夜纓を絶ちし者なり」と。遂に晋軍を敗り、楚以て強きを得たり、此れ陰徳有る者は必ず陽報有るなり。
-
人物志・材能寛弘の人は、宜しく郡国を為すべし。下をして其の功を施すを得しめて、其の事を総成す。急小の人は、宜しく百里を理むべし。事を己に辦ぜしむ。