呻吟語 / 内篇・修身・名利兩ながら得る者は其の最に居る
講學論道於師友之時,知其心術之所藏何如也;飭躬勵行於見聞之地,知其暗室之所為何知也。然則盜跖非元憝也,彼盜利而不盜名也。世之大盜,名利兩得者居其最。
新字:講学論道於師友之時,知其心術之所蔵何如也;飭躬勵行於見聞之地,知其暗室之所為何知也。然則盗跖非元憝也,彼盗利而不盗名也。世之大盗,名利両得者居其最。
書き下し
師友の時に講學論道すれば、其の心術の藏する所何如を知るなり。見聞の地に躬を飭へ行を勵ませば、其の暗室の為す所を知る。然らば則ち盜跖は元憝に非ざるなり。彼は利を盜みて名を盜まざればなり。世の大盜は、名利兩ながら得る者其の最に居る。
現代語訳
師や友といる時に学を講じ道を論ずれば、その人の心術に何がしまわれているかが分かります。人目のある所で身を整え行いを励めば、暗い部屋で何をしているかが分かります。とすれば盗跖は最悪の悪人ではありません。彼は利を盗んだだけで、名は盗まなかったからです。世の大盗は、名と利の両方を得る者こそが最たるものです。
解説
大盗賊として名高い盗跖を、最悪ではないと判定する逆説です。理由は、利を盗んだが名を盗まなかったから。盗んだうえで立派な評判まで得ている者こそ最悪だと言います。人目のある所で励んでいる姿から暗い部屋の行いが分かるという前半も鋭く、演じている人ほど演じていない時が知れるという観察になっています。評判の良さを、無条件の証拠にしてはならないということです。
この章句が説くこと
名利偽善評判盗見抜く
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