呻吟語 / 外篇・治道・其の由りて來たる所は漸なり
人情之所易忽,莫如漸;天下之大可畏,莫如漸。漸之始也,雖君子不以為意。有謂其當防者,雖君子亦以為迂。不知其極重不反之勢,天地聖人亦無如之奈何,其所由來者漸也。
新字:人情之所易忽,莫如漸;天下之大可畏,莫如漸。漸之始也,雖君子不以為意。有謂其当防者,雖君子亦以為迂。不知其極重不反之勢,天地聖人亦無如之奈何,其所由来者漸也。
書き下し
人情の忽せにし易き所は、漸に如くは莫し。天下の大いに畏る可きは、漸に如くは莫し。漸の始めや、君子と雖も以て意と為さず。其の當に防ぐべしと謂ふ者有るも、君子と雖も亦た以て迂と為す。其の極めて重く反らざるの勢ひは、天地聖人も亦た之を如何ともする無きを知らざるなり。其の由りて來たる所の者は漸なり。
現代語訳
人の情が忽せにしやすいものは、じわじわ進むことに及ぶものがありません。天下でひどく畏れるべきものも、じわじわ進むことに及びません。じわじわ進み始めたころは、君子でさえ気に留めません。防ぐべきだと言う者がいても、君子でさえ回りくどいと思います。ひどく重くなって戻らない勢いは、天地も聖人もどうしようもないと知らないのです。そこに至った由来は、じわじわ進んだことにあります。
解説
最も畏れるべきものを、じわじわ進むことに定めます。理由が明快で、君子でさえ気に留めないからです。しかも防ごうと言う者は回りくどいと思われる。つまり正しい警告が、正しい人からも退けられる構造になっています。そして戻らなくなったときには、天地も聖人も手が出せない。取り返しがつかなくなる過程が、気づかれないという一点で説明されています。次の段で、具体例が示されます。
この章句が説くこと
漸兆し警告不可逆見過ごし
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