呻吟語 / 外篇・治道・一日官に在らば一日職を盡くす
士君子到一個地位,就理會一個地位底職分,無逆料時之久暫而苟且其行,無期必人之用否而感忽其心。入門就心安志定,為久遠之計。即使不久於此,而一日在官,一日盡職,豈容一日苟祿尸位哉!
新字:士君子到一個地位,就理会一個地位底職分,無逆料時之久暫而苟且其行,無期必人之用否而感忽其心。入門就心安志定,為久遠之計。即使不久於此,而一日在官,一日尽職,豈容一日苟禄尸位哉!
書き下し
士君子は一個の地位に到らば、就ち一個の地位底の職分を理會す。時の久暫を逆料して其の行を苟且にする無く、人の用ふるや否やを期必して其の心を感忽にする無し。門に入らば就ち心安く志定まり、久遠の計を為す。即使ひ此に久しからずとも、一日官に在らば、一日職を盡くす。豈に一日の苟祿尸位を容れんや。
現代語訳
士君子は一つの地位に至れば、その地位の職分を理解します。在任が長いか短いかを先回りして行いを間に合わせにせず、人が用いてくれるかどうかを当てにして心を投げやりにしません。門に入れば心が安らぎ志が定まり、長く遠い計を立てます。たとえここに長くいられなくても、一日官にあれば一日職を尽くします。どうして一日でも禄を盗み位を空しくすることを許せるでしょうか。
解説
在任期間の不確かさを、手を抜く理由にするなと言います。短いかもしれない、用いてもらえないかもしれない。どちらも投げやりの口実になります。そこで一日単位に切り替えられます。一日官にあれば一日尽くす。前に出てきた、任期が短くて治が成らないという段が制度の問題を扱ったのに対し、こちらは個人の構えを扱っています。
この章句が説くこと
在任不確か一日投げやり構え
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・策名の後、身已に我の有に非ず士君子天下國家の事に任ぜんと要せば、先づ本身を把りて除外す。所以に策名委質と說く。名を策してより後、身已に我の有に非ずと言ふなり。況んや富貴をや。若し富貴身家に營營たらば、卻って是れ社稷蒼生の我に委質するなり。君の賊臣か、天の僇民か。
-
『呻吟語』外篇・治道・官を認めて自家の官と作す質を委ねて後より、終日做す底は是れ朝廷の官、執る底は是れ朝廷の法、幹す底は是れ朝廷の事なり。榮辱は君に在り、愛憎は人に在り、進退は我に在り。吾輩而今の錯る處は、官を把りて認めて自家の官と作す。所以に萬事顧み得ず、只だ這個を保全して在らんことを要し、這個の尊を扶持す。此れ是れ第二等の說話なりと雖も、然れども這個を見得て透らば、還ほ五分は算ふるに久し。
-
『呻吟語』内篇・修身・食功に浮かぶを君子は恥づ古の民の上に居る者は、一邑を治むれば則ち一邑の重きに任じ、一郡を治むれば則ち一郡の重きに任じ、天下を治むれば則ち天下の重きに任ず。朝夕其の事を思慮し、日夜其の務めを經紀す。一物所を失へば、席に安んずるに遑あらず。一事理を失へば、食に安んずるに遑あらず。才に限らるる者は吾が心を盡くさんことを求め、勢に限らるる者は吾が分を滿たさんことを求む。否らざれば是れ食功に浮かぶなり、君子之を恥づ。
-
『呻吟語』外篇・治道・試みに一たび反思せば以て其の望みに答ふる無くんば、何を以て此の職に稱はん。何を以て此の位に居らん。夙夜汲汲として圖り、惟だ之れ暇あらず。而るに安富尊榮の奉、身家妻子の謀に暇あり、一たび心に遂げざれば、而ち淫怒を是れ逞しくせんや。夫れ之に付するに生民の寄を以てするは、寧ぞ一已の欲を盈たすが為ならんや。試みに一たび反思せば、便ち當に愧汗すべし。
-
『呻吟語』外篇・治道・官を做すは好しと說かば世上に個の好く做す底の官沒し。抱關の吏と雖も、也た須らく夜行き早く起くべし。方めて稱職と為す。才かに官を做すは好しと說かば、便ち是れ官を做すの人に非ず。
-
『呻吟語』外篇・治道・鐵錚錚として做し將ち去る自家の官を別人に靠り著けて做す。只だ是れ腳跟を踏み定め身を挺して自ら拔くを肯んぜず。此れ縉紳第一の恥事なり。若し鐵錚錚として做し將ち去らば、他の如何なるに任すも、亦た顛躓僵僕せざる時有り。縱ひ顛躓僵僕せしむるも、也た奈何ともす可き無く、自ら是れ照管し得ず。