呻吟語 / 外篇・治道・朝廷の為に之を守る
自委質後,此身原不屬我。朝廷名分,為朝廷守之。一毫貶損不得,非抗也;一毫高亢不得,非卑也。朝廷法紀為朝廷執之,一毫徇人不得,非固也;一毫任己不得,非葸也。
新字:自委質後,此身原不属我。朝廷名分,為朝廷守之。一毫貶損不得,非抗也;一毫高亢不得,非卑也。朝廷法紀為朝廷執之,一毫徇人不得,非固也;一毫任己不得,非葸也。
書き下し
質を委ねて後より、此の身は原と我に屬せず。朝廷の名分は、朝廷の為に之を守る。一毫も貶損し得ざるは、抗するに非ざるなり。一毫も高亢し得ざるは、卑しきに非ざるなり。朝廷の法紀は朝廷の為に之を執る。一毫も人に徇ひ得ざるは、固なるに非ざるなり。一毫も己に任じ得ざるは、葸なるに非ざるなり。
現代語訳
身を委ねてからは、この身はもともと自分のものではありません。朝廷の名分は朝廷のために守ります。毛ほども貶め損なえないのは、逆らっているのではありません。毛ほども高ぶれないのは、卑屈なのではありません。朝廷の法と紀は朝廷のために執ります。毛ほども人に従えないのは、頑固なのではありません。毛ほども自分に任せられないのは、臆病なのではありません。
解説
預かり物としての立場を、四つの弁明で示します。譲らないのは逆らいではなく、へりくだらないのは卑屈ではなく、融通しないのは頑固ではなく、独断しないのは臆病ではない。どれも性格の話に見えるが、実は所有権の話だという構えです。自分のものでないから、譲ることも独断することもできない。人柄への誤解を、一つずつ解いた一段です。
この章句が説くこと
委質預かり名分弁明所有
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