呻吟語 / 外篇・治道・善く之を救ひ、善く之を馭す
事有知其當變而不得不因者,善救之而已矣;人有知其當退而不得不用者,善馭之而已矣。
新字:事有知其当変而不得不因者,善救之而已矣;人有知其当退而不得不用者,善馭之而已矣。
書き下し
事に其の當に變ずべきを知りて因らざるを得ざる者有らば、善く之を救ふのみ。人に其の當に退くべきを知りて用ひざるを得ざる者有らば、善く之を馭すのみ。
現代語訳
事に、変えるべきだと知りながら従わざるを得ないものがあれば、上手に救うだけです。人に、退けるべきだと知りながら用いざるを得ない者がいれば、上手に御するだけです。
解説
理想どおりにできない場面を、二つ挙げます。変えるべき事が変えられず、退けるべき人が退けられない。どちらも実務では珍しくありません。そのときの答えが、救うことと御することです。諦めるのでも、無理に押し通すのでもない。制約を認めたうえで最善を取る構えで、前に出てきた、繕うときは無事なところを切らないという段と同じ実務感覚が流れています。
この章句が説くこと
制約救う御する次善実務
関連する章句
-
孫子・九地篇山林・険阻・沮沢、凡そ行き難きの道なる者を、圮地と為す。
-
『茶の本』第四章 茶室・移動できる建築こういう習慣を守るのは、組み立て取りこわしの容易なわが国の木造建築のようなある建築様式においてのみ可能であった。煉瓦石材を用いるやや永続的な様式は移動できないようにしたであろう、奈良朝以後シナの鞏固な重々しい木造建築を採用するに及んで、実際移動不可能になったように。
-
『呻吟語』外篇・品藻・惟だ建業立功のみ是れ難事儒者は惟だ建業立功のみ是れ難事なり。自古の儒者の名を成すは多く是れ講學著述にして、人未だ嘗て盡くは言ふ所を試みず。恐らくは試みて後縱ひ邪氣ならざるも、其の實個の事功を成して狼狽して敗れざる者は定めて多く人ならず。
-
『呻吟語』内篇・修身・本然底の分量を滿たす平日書を讀むは、惟だ官を做すのみ是れ展布の時なり。窮居の見聞する所及び生平為さんと欲する所を將て一一之を試嘗す。須らく是れ理むる所の政事は各おの其の宜しきを得、治むる所の人物は各おの其の所を得べし。才かに是れ本然底の分量を滿たすなり。
-
『韓非子』姦劫弒臣第十四世主は仁義の名を美として其の實を察せず、是を以て大なる者は國亡び身死し、小なる者は地削られ主卑し。
-
説苑・貴德景公嬰児の途に乞ふ有るを睹て、公曰く、「是れ帰る無からんか」と。晏子対へて曰く、「君存す何為れぞ帰る無からん、養はしめば、立ちどころにして以て聞こゆべし」と。