呻吟語 / 外篇・天地・濁氣は醇、清氣は漓
濁氣醇,清氣漓;濁氣厚,清氣薄;濁氣同,清氣分;濁氣溫,清氣寒;濁氣柔,清氣剛;濁氣陰,消氣陽;濁氣豐,清氣嗇;濁氣甘,清氣苦;濁氣喜,清氣惡;濁氣榮,清氣枯;濁氣融,清氣孤;濁氣生,清氣殺。
新字:濁気醇,清気漓;濁気厚,清気薄;濁気同,清気分;濁気温,清気寒;濁気柔,清気剛;濁気陰,消気陽;濁気豊,清気嗇;濁気甘,清気苦;濁気喜,清気悪;濁気栄,清気枯;濁気融,清気孤;濁気生,清気殺。
書き下し
濁氣は醇、清氣は漓なり。濁氣は厚く、清氣は薄し。濁氣は同じく、清氣は分かる。濁氣は溫かく、清氣は寒し。濁氣は柔にして、清氣は剛なり。濁氣は陰にして、清氣は陽なり。濁氣は豐かにして、清氣は嗇し。濁氣は甘く、清氣は苦し。濁氣は榮え、清氣は枯る。濁氣は融け、清氣は孤なり。濁氣は生じ、清氣は殺す。
現代語訳
濁った気は濃く、澄んだ気は薄い。濁った気は厚く、澄んだ気は薄い。濁った気は同じく合い、澄んだ気は分かれます。濁った気は温かく、澄んだ気は寒い。濁った気は柔らかく、澄んだ気は剛い。濁った気は陰で、澄んだ気は陽です。濁った気は豊かで、澄んだ気は乏しい。濁った気は甘く、澄んだ気は苦い。濁った気は栄え、澄んだ気は枯れる。濁った気は溶け合い、澄んだ気は孤立する。濁った気は生かし、澄んだ気は殺します。
解説
濁と清を、十以上の対で並べます。濁が濃く厚く温かく豊かで生かす側、清が薄く寒く乏しく殺す側です。清らかさを無条件の美点とする感覚が、ここで完全に覆されます。人にも当てはめられ、清廉な人が孤立し人を生かせない理由が見えてきます。濁ることの効き目を並べ立てた一段です。清廉な人が孤立し人を生かせない理由が、見えてきます。
この章句が説くこと
清濁対比孤立生殺逆転
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『学問のすゝめ』十六編・心事と働きと相当すべきの論・みだりに人を軽蔑する者はまた心事高尚にして働きに乏しき者は、人に厭われて孤立することあり。己が働きと他人の働きとを比較すればもとより及ぶべきにあらざれども、己が心事をもって他の働きを見れば、これに満足すべからずして、おのずから私に軽蔑の念なきを得ず。みだりに人を軽蔑する者は、必ずまた人の軽蔑を免るべからず。互いに相不平をいだき、互いに相蔑視して、ついには変人奇物の嘲りを取り、世間に歯すべからざるに至るものなり。今日世の有様を見るにあるいは傲慢不遜にして人に厭わるる者あり、あるいは人に勝つことを欲して人に厭わるる者あり、あるいは人に多を求めて人に厭わるる者あり、あるいは人を誹謗して人に厭わるる者あり。いずれもみな人に対して比較するところを失い、己が高尚なる心事をもって標的となし、これに照らすに他の働きをもってして、その際に恍惚たる想像を造り、もって人に厭わるるの端を開き、ついにみずから人を避けて独歩孤立の苦界に陥る者なり。
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