呻吟語 / 外篇・治道・人情の竇を開かず
君子之於風俗也,守先王之禮而儉約是崇,不妄開事端以貽可長之漸。是故漆器不至金玉,而刻鏤之不止;黼黻不至庶人,錦繡被牆屋不止。民貧盜起不顧也,嚴刑峻法莫禁也。是故君子謹其事端,不開人情竇而恣小人無厭之欲。
新字:君子之於風俗也,守先王之礼而倹約是崇,不妄開事端以貽可長之漸。是故漆器不至金玉,而刻鏤之不止;黼黻不至庶人,錦繡被牆屋不止。民貧盗起不顧也,厳刑峻法莫禁也。是故君子謹其事端,不開人情竇而恣小人無厭之欲。
書き下し
君子の風俗に於けるや、先王の禮を守りて儉約是れ崇び、妄りに事端を開きて以て長ず可きの漸を貽さず。是の故に漆器は金玉に至らざるも、之を刻鏤して止まず。黼黻は庶人に至らざるも、錦繡もて牆屋を被ひて止まず。民貧しく盜起こるも顧みざるなり。嚴刑峻法も禁ずる莫きなり。是の故に君子は其の事端を謹み、人情の竇を開きて小人無厭の欲を恣にせず。
現代語訳
君子が風俗に対するときは、先王の礼を守って倹約を尊び、みだりに事の端を開いて、伸びていくきっかけを残しません。だから漆器が金玉に至らなくても、彫り飾ることが止まりません。礼服の刺繍が庶人に及ばなくても、錦で壁や屋根を覆うことが止まりません。民が貧しくなり盗みが起こっても顧みません。厳しい刑罰や法でも禁じられません。だから君子は事の端を謹み、人の情の穴を開けて、小人の飽きることない欲を思うままにさせないのです。
解説
前の段の漸を、贅沢の広がりで具体化します。漆器から金玉へ、礼服から壁掛けへ。一つ許せば次が来て、止まる地点がありません。そして厳しい刑罰でも禁じられないと言い切ります。始まってしまえば法が効かないからこそ、始まりの端を謹むわけです。人情の穴という言い方が印象的で、一度開けば水のように広がる像になっています。予防が唯一の手段だという主張が、具体例で裏づけられた一段です。
この章句が説くこと
贅沢事端予防人情際限
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