呻吟語 / 内篇・倫理・慎言の地は、惟だ家庭を要と為す
慎言之地,惟家庭為要;應慎言之人,惟妻子、僕隸為要。此理亂之原而禍福之本也。人往往忽之,悲夫!
新字:慎言之地,惟家庭為要;応慎言之人,惟妻子、僕隸為要。此理乱之原而禍福之本也。人往往忽之,悲夫!
書き下し
慎言の地は、惟だ家庭を要と為す。應に言を慎むべきの人は、惟だ妻子・僕隸を要と為す。此れ理亂の原にして禍福の本なり。人往往にして之を忽にす、悲しいかな。
現代語訳
言葉を慎むべき場所は、ただ家庭が最も大切です。言葉を慎むべき相手は、ただ妻子と使用人が最も大切です。これが治まるか乱れるかの源であり、禍と福のもとです。人はしばしばこれを軽んじます。悲しいことです。
解説
言葉を慎む場所と相手が、外ではなく家の中に定められます。よそ行きの席ではなく家庭、賓客ではなく妻子と使用人。気を抜きやすい場所こそ要だという指摘です。そして規模の大きな言葉が続きます。治乱の源であり禍福のもとだ、と。家庭での口の利き方を、国の治乱と同じ物差しで測る大胆さがあります。よそ行きの慎みは誰でも持ちますが、家の中では緩むのが常だからです。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
慎言家庭妻子僕隷軽視
関連する章句
-
尚書・說命中惟れ説百官を総ぶるを命ぜられ、乃ち王に進みて曰く、「嗚呼(ああ)、明王天道を奉じ若(したが)ひ、邦を建て都を設け、后王君公を樹て、承くるに大夫師長を以てす。惟れ逸豫の為ならず、惟れ以て民を乱(をさ)めんとなり。惟れ天は聡明なり、惟れ聖は時れ憲(のっと)り、惟れ臣は欽み若ひ、惟れ民は従ひて乂(をさ)まる。惟れ口は羞を起こし、惟れ甲冑は戎を起こす。惟れ衣裳は笥に在り、惟れ干戈は厥の躬を省みる。王惟れ茲を戒め、允に茲に克く明らかなれば、乃ち休(よ)からざる罔し。
-
言志四録・言志録 第百八十九条 禍は口より出で病は口より入る人は最も当に口を慎むべし。口の職は二用を兼ぬ。言語を出だし、飲食を納るる、是れなり。言語を慎まざれば、以て禍を速くに足る。飲食を慎まざれば、以て病を致すに足る。諺に云ふ、「禍は口より出で、病は口より入る」と。
-
『格言聯璧』悖凶類・人の善を談ずるは膏沐よりも澤ふ言語の惡は、誣を造るより大なるは莫し。 行事の惡は、苛刻より大なるは莫し。 心術の惡は、深險より大なるは莫し。 人の善を談ずるは、膏沐よりも澤ふ。 人の惡を暴くは、戈矛よりも痛し。 厄に當たるの施しは、甘きこと時雨為り。
-
『酔古堂剣掃』集醒・聖人の言は簡なり神人の言は微、聖人の言は簡、賢人の言は明、眾人の言は多、小人の言は妄なり。
-
『格言聯璧』接物類・善を責むるには言を盡くすを戒む輕々しく信じ輕々しく發するは、言を聽くの大戒なり。 愈々激し愈々厲しくするは、善を責むるの大戒なり。 事に處するには須らく余地を留むべし、善を責むるには切に言を盡くすを戒む。 我に在る有餘の惠を施せば、則ち以て德を廣むべし。 人に在る不盡の情を留むれば、則ち以て交はりを全うすべし。
-
『格言聯璧』接物類・其の口を三緘して金人に學ぶ己を修むるには心を清くするを以て要と爲し、世を涉るには言を慎むを以て先と爲す。 惡は己の欲を縱にするより大なるは莫く、禍は人の非を言ふより大なるは莫し。 人生には惟だ酒色の機關あり、須らく此の身を百煉して鐵漢と成るべし。 世上には是非の門戶有り、其の口を三緘して金人に學ぶを要す。