呻吟語 / 外篇・治道・各おの其の位に安んず
平之一字極有意味,所以至治之世只說個天下平。或言:「水無高下,一經流注無不得平。」曰:「此是一味平了。世間千種人,萬般物,百樣事,各有分量,各有差等,只各安其位而無一毫拂淚不安之意,這便是太平。如君說則是等尊卑貴賤小大而齊之矣,不平莫大乎是。
新字:平之一字極有意味,所以至治之世只説個天下平。或言:「水無高下,一経流注無不得平。」曰:「此是一味平了。世間千種人,万般物,百様事,各有分量,各有差等,只各安其位而無一毫払涙不安之意,這便是太平。如君説則是等尊卑貴賤小大而斉之矣,不平莫大乎是。
書き下し
平の一字は極めて意味有り。所以に至治の世は只だ個の天下平と說く。或るひと言ふ、「水に高下無し、一たび流注を經れば平を得ざる無し」と。曰く、「此れは是れ一味に平らかにし了へたり。世間の千種の人、萬般の物、百樣の事は、各おの分量有り、各おの差等有り。只だ各おの其の位に安んじて一毫も拂淚不安の意無し。這れ便ち是れ太平なり。君の說の如くんば則ち是れ尊卑貴賤小大を等しくして之を齊しくするなり。不平は是れより大なるは莫し」と。
現代語訳
平という一字は実に意味深い。だから至って治まった世を、ただ天下が平らかだと言います。ある人が言いました。水に高低は無く、ひとたび流し注げば平らかにならないことはありません。答えて言う。それは一律に平らかにしただけです。世の千種の人、万般の物、百様の事には、それぞれ分量があり、それぞれ差があります。ただそれぞれがその位に安んじて、毛ほども逆らい不安に思う気持ちが無い。これが太平です。あなたの説なら、尊卑貴賤大小を等しくして揃えることになります。不平はこれより大きいものはありません。
解説
平という語の意味を、水の比喩を退けることで定義します。水のように一律にするのは平ではなく、揃えることです。本当の平は、それぞれが違う位にいて、そこに逆らう気持ちが無い状態。差があることが前提になっています。そして一律化こそ最大の不平だとされます。前に出てきた、揃っていないのが天の道だという段と同じ主張が、平の定義として述べられた一段です。
この章句が説くこと
平一律差等安位定義
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