呻吟語 / 内篇・倫理・別有るは先づ夫婦より始まる
宇宙內大情種,男女居其第一。聖王不欲裁割而矯拂之,亦不能裁割矯拂也。故通之以不可已之情,約之以不可犯之禮,繩之以必不赦之法,使縱之而相安相久也。聖人亦不若是之亟也,故五倫中父子、君臣、兄弟、朋友,篤了又篤,厚了又厚,惟恐情意之薄。惟男女一倫,是聖人苦心處,故有別先自夫婦始。本與之以無別也,而又教之以有別,況有別者而肯使之混乎?聖人之用意深矣!是死生之衢而大亂之首也,不可以不慎也。
新字:宇宙内大情種,男女居其第一。聖王不欲裁割而矯払之,亦不能裁割矯払也。故通之以不可已之情,約之以不可犯之礼,縄之以必不赦之法,使縦之而相安相久也。聖人亦不若是之亟也,故五倫中父子、君臣、兄弟、朋友,篤了又篤,厚了又厚,惟恐情意之薄。惟男女一倫,是聖人苦心処,故有別先自夫婦始。本与之以無別也,而又教之以有別,況有別者而肯使之混乎?聖人之用意深矣!是死生之衢而大乱之首也,不可以不慎也。
書き下し
宇宙内の大情種は、男女其の第一に居る。聖王も裁割して之を矯拂せんと欲せず、亦た裁割矯拂する能はざるなり。故に之を通ずるに已む可からざるの情を以てし、之を約するに犯す可からざるの禮を以てし、之を繩するに必ず赦さざるの法を以てす。之を縱にして相安んじ相久しからしむるなり。聖人も亦た是くのごとく亟ならず、故に五倫中の父子・君臣・兄弟・朋友は、篤くして又篤く、厚くして又厚く、惟だ情意の薄きを恐る。惟だ男女一倫のみ、是れ聖人の苦心する處なり。故に別有るは先づ夫婦より始まる。本と之に與ふるに別無きを以てして、又之に教ふるに別有るを以てす。況んや別有る者にして肯へて之を混ぜしめんや。聖人の意を用ふること深し。是れ死生の衢にして大亂の首なり、以て慎まざる可からざるなり。
現代語訳
この世で最も大きな情の種は、男女がその第一です。聖王もこれを断ち切って無理に曲げようとはせず、また断ち切り曲げることもできません。ですからやむを得ない情によって通わせ、犯してはならない礼によって束ね、必ず赦さない法によって縛る。放っておいても互いに安んじ長続きするようにするのです。聖人もこれほど急ぎませんでした。ですから五倫のうち父子、君臣、兄弟、朋友は、篤くまた篤く、厚くまた厚くして、ただ情が薄くなることだけを恐れます。ただ男女の一倫だけが、聖人の苦心したところです。ですから別があるという教えは、まず夫婦から始まります。もともと別が無いものとして与えておきながら、さらに別があると教える。まして別がある間柄なら、どうして混じらせてよいでしょうか。聖人の心づかいは深い。これは生死の分かれ道であり、大きな乱れの始まりです。慎まないわけにいきません。
解説

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