呻吟語 / 外篇・天地・惟だ續なり、惟だ漸なり
定則水,燥則火,吾心自有水火;靜則寒,動則熱,吾身自有冰炭。然則天地之冰炭誰為之?亦動靜為之。一陰生而宇宙入靜,至十月閉塞而成寒;一陽生而宇宙入動,至五月薰蒸而成暑。或曰,「五月陰生矣,而六月大暑,十一月陽生矣,而十二月大寒;何也?」曰:「陽不極則不能生陰,陰不極則不能生陽,勢窮則反也。微陰激陽,則陽不受激而愈熾;微陽激陰,則陰不受激而愈溢,氣逼則甚也。至七月、正月,則陰陽相戰,客不勝主,衰不勝旺,過去者不勝方來。故七月大火西流,而金漸生水;正月析木用事,而水漸生火。蓋陰陽之氣續接非直接,直接則絕,父母死而子始生,有是理乎?漸至非驟至,驟至則激,五穀種而能即熟,有是理乎?二氣萬古長存,萬物四時成遂,皆續與漸為之也。惟續,故不已;惟漸,故無跡。
新字:定則水,燥則火,吾心自有水火;静則寒,動則熱,吾身自有冰炭。然則天地之冰炭誰為之?亦動静為之。一陰生而宇宙入静,至十月閉塞而成寒;一陽生而宇宙入動,至五月薫蒸而成暑。或曰,「五月陰生矣,而六月大暑,十一月陽生矣,而十二月大寒;何也?」曰:「陽不極則不能生陰,陰不極則不能生陽,勢窮則反也。微陰激陽,則陽不受激而愈熾;微陽激陰,則陰不受激而愈溢,気逼則甚也。至七月、正月,則陰陽相戦,客不勝主,衰不勝旺,過去者不勝方来。故七月大火西流,而金漸生水;正月析木用事,而水漸生火。蓋陰陽之気続接非直接,直接則絶,父母死而子始生,有是理乎?漸至非驟至,驟至則激,五穀種而能即熟,有是理乎?二気万古長存,万物四時成遂,皆続与漸為之也。惟続,故不已;惟漸,故無跡。
書き下し
定まれば則ち水、燥けば則ち火なり。吾が心自ら水火有り。靜なれば則ち寒、動けば則ち熱なり。吾が身自ら冰炭有り。然らば則ち天地の冰炭は誰か之を為す。亦た動靜之を為すなり。陽極まらざれば則ち陰を生ずる能はず、陰極まらざれば則ち陽を生ずる能はず。勢窮まれば則ち反ればなり。蓋し陰陽の氣は續接して直接に非ず、直接なれば則ち絕ゆ。漸至にして驟至に非ず、驟至なれば則ち激す。二氣萬古長存し、萬物四時成遂するは、皆な續と漸と之を為すなり。惟だ續なり、故に已まず。惟だ漸なり、故に跡無し。
現代語訳
定まれば水、乾けば火です。私の心にもともと水と火があります。静かなら寒く、動けば熱い。私の身にもともと氷と炭があります。では天地の氷と炭は誰が作るのか。これも動と静が作るのです。陽が極まらなければ陰を生めず、陰が極まらなければ陽を生めません。勢いが窮まれば反るからです。陰陽の気は継ぎ足されるのであって、直につながるのではありません。直につなげば絶えます。次第に至るのであって、急に至るのではありません。急に至れば激します。二つの気が万古にわたって存し、万物が四季に実るのは、みな継ぐことと次第に進むことによります。継ぐからこそ止まず、次第に進むからこそ跡が残りません。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』外篇・天地・一噓一吸噓氣は內より外に之くなり、吸氣は外より內に之くなり。天地の初めの噓を春と為し、噓し盡くすを夏と為す。故に萬物は噓に隨ひて生長す。天地の初めの吸を秋と為し、吸ひ盡くすを冬と為す。故に萬物は吸に隨ひて收藏す。噓は、上升の陽氣なり、陽は發を主る。吸は、下降の陰氣なり、陰は成を主る。一噓一吸、開闢より以來混沌の後に至るまで、只だ這の一絲の氣なり。毫髮も斷ゆる處有らば、萬物滅し、天地毀る。
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『呻吟語』外篇・天地・陰陽は萬物に原と相干せず萬物は陰陽に生じ、陰陽に死す。陰陽は萬物に於て原と相干せず、其の自然に任するのみ。雨は物を潤さんと欲するに非ず、旱は物を熯さんと欲するに非ず、風は物を撓さんと欲するに非ず、雷は物を震はんと欲するに非ず。陰陽は其の氣の自然に任せて、萬物之に因りて以て生死するのみ。若し心有りて化を成さば、則ち寒暑災樣其の正を得て、乃ち天心を見んか。
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『呻吟語』外篇・天地・勢極まれば必ず反る大抵陰陽の氣は一たび偏れば必ず極まり、勢極まれば必ず反る。陰陽乖戾して分かる。故に孤陽亢りて陰に下らざれば則ち旱す。其の極まる無くんばあらず、陽極まれば必ず陰を生ず。故に久しくして雨ふる。陰陽和合して留まる。故に淫陰升りて陽を捨てざれば則ち雨ふる。其の極まる無くんばあらず、陰極まれば必ず陽を生ず。故に久しくして睛る。
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『呻吟語』外篇・天地・久しく陰なれば則ち權は雨に在り風は惟だ其の吹拂を知るのみ、雨は惟だ其の淋漓を知るのみ、雪は惟だ其の嚴凝を知るのみ、水は惟だ其の流行を知るのみ、火は惟だ其の燔灼を知るのみ。足らざれば則ち息を屏めて各おの其の用を藏し、餘り有れば則ち猖狂して各おの其の性を恣にす。卒然として感ずれば則ち強き者勝つ。兩軍交戰して、相下りて後已むが若し。是の故に久しく陰なれば則ち權は雨に在りて、日月明を為し難く、久しく旱なれば則ち權は風に在りて、雲雨澤を為し難し。以て水火霜雪に至るまで皆な然らざる莫し。誰か之を為す。
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『呻吟語』外篇・天地・四時惟だ冬のみ天地の性四時は惟だ冬のみ是れ天地の性、春夏秋は皆な天地の情なり。故に其の萬物を生ずるや、動氣多くして靜氣少なし。
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『呻吟語』外篇・廣喻・外撓む可きが若きは陽は動を主る。動けば燥を生ず。陽に得る有らば、則ち袒裼して以て冰雪に臥す可し。陰は靜を主る。靜なれば寒を生ず。靜に得る有らば、則ち盛暑にも裘褐を衣る可し。君子は道に得る有らば、往くとして裕如たらざる如きあらんや。外撓む可きが若きは、必ず內に得る所無き者なり。