呻吟語 / 外篇・聖賢・平生一事も人を瞞す可き無し
平生無一事可瞞人,此是大快樂。
新字:平生無一事可瞞人,此是大快楽。
書き下し
平生一事も人を瞞す可き無し。此れは是れ大快樂なり。
現代語訳
生涯にわたって一つも人に隠すことが無い。これこそ大きな快楽です。
解説
隠し事の無さを、義務ではなく快楽として語ります。慎独の議論は厳しい調子のものが多いのですが、ここでは得られるものが示されます。隠すものが無ければ取り繕う手間も恐れも消える。前に出てきた、聖賢の私信は人に見せられるという段の、内側から見た感覚が短く述べられた一段です。隠すものが無ければ、取り繕う手間も恐れも消えます。
この章句が説くこと
隠し事快楽慎独手間軽さ
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・聖賢・天下人と見る可し聖賢の私書は、天下の人と見る可し。密事は、天下の人と知る可し。不意の言は、天下の人と聞く可し。暗室の中は、天下の人と窺ふ可し。
-
『呻吟語』内篇・修身・寡言者のみ過ち寡し惟だ聖賢のみ終日話を說きて一字の差失無し。其の餘は都て之を擬して而る後に言ふを要す。餘り有るも、敢へて盡くさず。然らずんば未だ過ち無き者有らず。故に惟だ寡言者のみ過ち寡し。
-
『呻吟語』内篇・修身・本態は自然に露出す萬分の矜持、千分の點檢に任教すとも、裡面に自然の根本無くんば、倉卒の際、忽突の頃、本態は自然に露出す。是を以て君子は獨を慎む。獨中には只だ這個有り、發出し來たれば只だ是れ這個なり。何ぞ迴護するを勞せん、何ぞ支吾するを用ひん。
-
『呻吟語』内篇・修身・四つの愆を自ら負ふ密語を問ふ者有りて囑して曰く、「望むらくは實心を以て相告げよ」と。余笑ひて曰く、「吾に內は瞞す可からざるの本心有り、上は欺く可からざるの天日有り、本人に在りては掩ふ可からざるの是非有り、通國に在りては泯ぼすを容れざるの公論有り。一たび實ならざる有らば、自ら四愆を負はん。何ぞ貌言を以て門下を誑くに暇あらんや」と。
-
『呻吟語』内篇・修身・心を平らかにし氣を易くす一切の言行は、只だ是れ心を平らかにし氣を易くすれば就ち好し。
-
『呻吟語』内篇・修身・枕席の言は四海に通ず枕席の言、房闥の行は、四海に通ず。牆卑く室淺き者は論ずる無く、即ち宮禁の深嚴なるも、言ひて知られず、動きて聞かれざる者有る無し。士君子名節を愛せずんば則ち已む。如し一毫も自ら好むの心有らば、幽獨盲動慎まざる可けんや。