呻吟語 / 内篇・存心・憂世者と忘世者と
憂世者與忘世者談,忘世者笑;忘世者與憂世者談,憂世者悲。嗟夫!六合骨肉之淚,肯向一室胡越之人哭哉?彼且謂我為病狂,而又安能自知其喪心哉?
新字:憂世者与忘世者談,忘世者笑;忘世者与憂世者談,憂世者悲。嗟夫!六合骨肉之涙,肯向一室胡越之人哭哉?彼且謂我為病狂,而又安能自知其喪心哉?
書き下し
憂世の者、忘世の者と談ずれば、忘世者笑ふ。忘世の者、憂世の者と談ずれば、憂世者悲しむ。嗟夫、六合骨肉の淚、肯へて一室胡越の人に向かひて哭せんや。彼は且つ我を病狂と謂はん。而して又安んぞ能く自ら其の心を喪へるを知らんや。
現代語訳
世を憂える者が世を忘れた者と語れば、世を忘れた者は笑います。世を忘れた者が世を憂える者と語れば、世を憂える者は悲しみます。ああ、天下を骨肉と思って流す涙を、同じ部屋にいながら胡と越ほど離れた人に向かって泣いてみせるでしょうか。相手はこちらを狂っていると言うでしょう。そしてどうして自分が心を失っていると気づけるでしょうか。
解説
話の通じない二者が向かい合う場面です。世を憂える者と、世を忘れた者。同じ話をしても、片方は笑い片方は悲しむ。同じ部屋にいるのに胡と越ほど離れている、という言い方が的確です。そして最後が重い。相手はこちらを狂人と呼ぶが、自分が心を失っていることには気づけない、と。分かり合えなさを嘆くだけで終わらない一段です。
この章句が説くこと
憂世忘世断絶胡越無自覚
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