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呻吟語 / 内篇・談道・天言・人言・鬼言

正大光明,透徹簡易,如天地之為形,如日月之垂象,足以開物成務,足以濟世安民,達之天下萬世而無弊,此謂天言。平易明白,切近精實,出於吾口而當於天下之心,載之典籍而裨於古人之道,是謂人言。艱深幽僻,弔詭探奇,不自句讀不能通其文,通則無分毫會心之理趣;不考音韻不能識其字,識則皆常行日用之形聲,是謂鬼言。鬼言者,道之賊也,木之孽也,經生學士之殃也。然而世人崇尚之者,何逃之?怪異足以文凡陋之筆,見其怪異,易以駭膚淺之目。此光明平易大雅君子為之汗顏泚顙,而彼方以為得意者也。哀哉!

新字:正大光明,透徹簡易,如天地之為形,如日月之垂象,足以開物成務,足以済世安民,達之天下万世而無弊,此謂天言。平易明白,切近精実,出於吾口而当於天下之心,載之典籍而裨於古人之道,是謂人言。艱深幽僻,弔詭探奇,不自句読不能通其文,通則無分毫会心之理趣;不考音韻不能識其字,識則皆常行日用之形声,是謂鬼言。鬼言者,道之賊也,木之孽也,経生学士之殃也。然而世人崇尚之者,何逃之?怪異足以文凡陋之筆,見其怪異,易以駭膚浅之目。此光明平易大雅君子為之汗顏泚顙,而彼方以為得意者也。哀哉!

書き下し

正大光明、透徹簡易にして、天地の形を為すが如く、日月の象を垂るるが如く、以て物を開き務を成すに足り、以て世を濟ひ民を安んずるに足り、之を天下萬世に達して弊無し、此れを天言と謂ふ。平易明白、切近精實にして、吾が口より出でて天下の心に當たり、之を典籍に載せて古人の道に裨あり、是れを人言と謂ふ。艱深幽僻、弔詭探奇にして、句讀に自らせずんば其の文を通ずる能はず、通ずれば則ち分毫も會心の理趣無く、音韻を考へずんば其の字を識る能はず、識れば則ち皆な常行日用の形聲なり、是れを鬼言と謂ふ。鬼言なる者は、道の賊なり、木の孽なり、經生學士の殃なり。

現代語訳

堂々と明るく、筋が通って易しく、天地が形をなすように、日月が光を垂れるように、物事を開き仕事を成し、世を救い民を安んじ、いつの世に持っていっても害がない。これを天の言葉と言います。平易で明白、身近で確かで、自分の口から出て天下の人の心に当たり、書物に載せれば古人の道の助けになる。これを人の言葉と言います。むやみに難しく奇をてらい、句の切れ目を調べなければ文が読めず、読めたところで心に響く理はひとつもなく、音を調べなければ字が読めず、読めてみればどれも日常の言葉である。これを鬼の言葉と言います。鬼の言葉は道の賊であり、木を枯らす災いであり、学者にとっての祟りです。

解説

言葉を天と人と鬼の三つに分ける、呻吟語でも屈指の激しい一段です。鬼言の定義が具体的で、苦労して読み解いた末に中身が日常語でしかなかったもの、と言われています。難解さが中身の深さと取り違えられる事情まで見抜いており、奇をてらえば筆の貧しさを隠せるし、浅い読者は驚いてくれる、と書きます。書く者の背筋が寒くなる批評です。

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