呻吟語 / 外篇・治道・獨斷とは先づ謀を集むるの謂ひなり
為政以問察為第一要,此堯舜治天下之妙法也。今人塞耳閉目只憑獨斷,以寧錯勿問,恐蹈耳軟之病,大可笑。此不求本原耳。吾心果明,則擇眾論以取中,自無偏聽之失。心一愚暗,即詢岳牧芻蕘,尚不能自決,況獨斷乎?所謂獨斷者,先集謀之謂也。謀非集眾不精,斷非一己不決。
新字:為政以問察為第一要,此堯舜治天下之妙法也。今人塞耳閉目只憑独断,以寧錯勿問,恐蹈耳軟之病,大可笑。此不求本原耳。吾心果明,則択眾論以取中,自無偏聴之失。心一愚暗,即詢岳牧芻蕘,尚不能自決,況独断乎?所謂独断者,先集謀之謂也。謀非集眾不精,断非一己不決。
書き下し
政を為すに問察を以て第一の要と為す。此れ堯舜の天下を治むるの妙法なり。今人は耳を塞ぎ目を閉ぢて只だ獨斷に憑る。寧ろ錯るも問ふ勿かれと以て、耳軟の病を蹈むを恐る。大いに笑ふ可し。此れ本原を求めざるのみ。吾が心果たして明らかならば、則ち眾論を擇びて以て中を取り、自ら偏聽の失無し。心一たび愚暗ならば、即ち岳牧芻蕘に詢ふも、尚ほ自ら決する能はず。況んや獨斷をや。所謂獨斷とは、先づ謀を集むるの謂ひなり。謀は眾を集むるに非ずんば精しからず、斷は一己に非ずんば決せず。
現代語訳
政治を行うのに問い察することを第一の要とします。これが堯舜が天下を治めた妙法です。今の人は耳を塞ぎ目を閉じて、ただ独断に頼ります。誤っても問うなと考え、耳が軟らかいという病に陥るのを恐れます。大いに笑うべきです。これは本を求めていないだけです。自分の心が本当に明らかなら、多くの議論から選んで中を取り、自ずと偏った聴き方の失敗はありません。心がひとたび愚かで暗ければ、四岳や牧や草刈りに尋ねても、やはり自分で決められません。まして独断ならなおさらです。いわゆる独断とは、まず謀を集めることを言います。謀は多くを集めなければ精しくならず、断は自分一人でなければ決まりません。
解説
独断を否定するのではなく、定義し直します。まず謀を集めてから断じるのが独断だ、と。だから問い察することと独断は矛盾しません。そして耳が軟らかいという病への恐れが笑われます。心が明らかなら多くの意見から中を取れ、暗ければ誰に尋ねても決まらない。問題は意見の数ではなく自分の明暗だという整理になっています。
この章句が説くこと
問察独断集謀耳軟明暗
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