呻吟語 / 外篇・廣喻・河を治むる者は知らざる可からず
口塞而鼻氣盛,鼻塞而口氣盛,鼻口俱塞,脹悶而死。治河者不可不知也。故欲其力大而勢急,則塞其旁流,欲其力微而勢殺也,則多其支派,欲其蓄積而有用也,則節其急流。治天下之於民情也亦然。
新字:口塞而鼻気盛,鼻塞而口気盛,鼻口倶塞,脹悶而死。治河者不可不知也。故欲其力大而勢急,則塞其旁流,欲其力微而勢殺也,則多其支派,欲其蓄積而有用也,則節其急流。治天下之於民情也亦然。
書き下し
口塞がれば鼻氣盛んに、鼻塞がれば口氣盛んなり。鼻口俱に塞がらば、脹悶して死す。河を治むる者は知らざる可からざるなり。故に其の力大にして勢ひ急ならんことを欲せば、則ち其の旁流を塞ぐ。其の力微にして勢ひ殺がれんことを欲せば、則ち其の支派を多くす。其の蓄積して用有らんことを欲せば、則ち其の急流を節す。天下を治むるの民情に於けるも亦た然り。
現代語訳
口が塞がれば鼻の息が盛んになり、鼻が塞がれば口の息が盛んになります。鼻も口もともに塞がれば、膨れ苦しんで死にます。河を治める者は知らないわけにいきません。だからその力を大きく勢いを急にしたければ、脇の流れを塞ぎます。その力を弱め勢いを削ぎたければ、支流を多くします。蓄えて用に立てたければ、急な流れを節します。天下を治めるのが民の情に対するのも同じです。
解説
呼吸の観察から始めます。片方を塞げばもう片方が強まり、両方塞げば死ぬ。そこから治水の三つの手が導かれます。強めたければ脇を塞ぎ、弱めたければ支流を増やし、蓄えたければ急流を節する。すべて塞ぐか流すかの組み合わせです。そして民情に当てはめられます。抑えるのではなく配分するという考え方になっています。抑えるのではなく配分する、という考え方です。
この章句が説くこと
呼吸治水配分支流民情
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『呻吟語』外篇・治道・民情を正に引く夫れ水を治むる者は、之を通ずるは乃ち之を窮むる所以にして、之を塞ぐは乃ち之を決する所以なり。民情も亦た然り。故に先王は民情を正に引き、法に裁せず。法と情と俱には行はれず、一つ存すれば則ち一つ亡ぶ。三代の天下を得るは、民情を得るなり。其の天下を守るや、民情を調ふるなり。之に順ひて拂らざらしめ、之を節して過ぎざらしむ、是れを之れ調ふと謂ふ。
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