呻吟語 / 内篇・應務・先づ物我の藩籬を推し開く
植萬古綱常,先立定自家地步;做兩間事業,先推開物我藩籬。
新字:植万古綱常,先立定自家地歩;做両間事業,先推開物我藩籬。
書き下し
萬古の綱常を植うるは、先づ自家の地步を立定す。兩間の事業を做すは、先づ物我の藩籬を推し開く。
現代語訳
万古の綱常を打ち立てるには、まず自分の足場を定めます。天地のあいだの事業をなすには、まず物と我を隔てる垣根を押し開きます。
解説
二つの大事業に、それぞれ先立つ一手を示します。綱常には自分の足場、事業には物我の垣根を外すこと。前者は自分を固め、後者は自分を開く。方向が正反対なのが面白いところです。固めるべき場面と、開くべき場面がある。對句の形で、着手の順序を示した一段になっています。固めるべき場面と、開くべき場面がある。方向が正反対の二つを並べて、着手の順序を示した一段です。
この章句が説くこと
綱常足場物我垣根着手
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・先づ我の字を閣起す天下の事に處するは、先づ我の字を把りて閣起す。千軍萬馬の中は、先づ人の字を把りて閣起す。
-
『呻吟語』内篇・應務・實處に腳を著け、穩處に手を下す實處に腳を著け、穩處に手を下す。
-
『呻吟語』内篇・存心・七尺を理會せんと欲せば、先づ方寸を理會せよ七尺を理會せんと欲せば、先づ方寸を理會せよ。六合を理會せんと欲せば、先づ一腔を理會せよ。
-
『呻吟語』内篇・應務・事に處するは先づ大體を求む事に處するは先づ大體を求め、官に居るは先づ民風を厚くす。
-
『呻吟語』内篇・應務・才かに手を下せば便ち究竟の處を想ふ才かに手を下せば、便ち究竟の處を想ふ。
-
『呻吟語』内篇・應務・己を約して人を豐かにす規模は先づ個の闊大なるを要し、意思は先づ個の安閑なるを要す。古の人は己を約して人を豐かにす。故に群下樂しみて之が用と為り、而して得る所常に倍す。徐ろに思ひて審らかに處す。故に己勞せずして事極めて精詳なり。褊急の二字は、世に處するの大礙なり。