呻吟語 / 内篇・修身・這の一二分を都て沒くして才かに人を責む可し
一友與人爭,而歷指其短。予曰,「於十分中,君有一分不是否?」友曰:「我難說沒一二分。」予曰:「且將這一二分都沒了才好責人。」
新字:一友与人争,而歴指其短。予曰,「於十分中,君有一分不是否?」友曰:「我難説没一二分。」予曰:「且将這一二分都没了才好責人。」
書き下し
一友人と爭ひて、歷に其の短を指す。予曰く、「十分の中に於て、君に一分の不是有るか否か」と。友曰く、「我難しと說ふも一二分無きにあらず」と。予曰く、「且く這の一二分を將て都て沒くして才かに人を責む可し」と。
現代語訳
ある友人が人と争って、相手の欠点を一つ一つ数え上げました。私は言いました。十のうち、あなたに一分の非はありませんか。友人は言いました。無いとは言いにくく、一分二分はあります。私は言いました。ではまずその一分二分をすっかり無くしてから、人を責めるのがよいでしょう。
解説
欠点を数え上げる友人に、割合を尋ねるところから入ります。相手が正直に一分二分と認めた時点で、話は決まったようなものです。まずそれを無くしてから、と返す。責めるなと説教するのではなく、順序を一つ挟むだけで相手が黙る形になっています。会話の記録として残されているぶん、手口がそのまま学べる一段です。説教せず、順序を一つ挟むだけで相手が黙るのです。
この章句が説くこと
他責自責順序会話割合
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・人情・五分の過惡を三四分だけ攻む人を攻むる者は、五分の過惡有らば、只だ他の三四分を攻む。惟だ彼に餘懼有るのみならず、亦た心を傾け服を引き、以て其の辯口を塞ぐに足る。五分に攻め到らば、已に渾厚を傷りて、我に救性無し。若し更に一分を多くせば、是れ之に自解の資を貽すなり。彼は其の一に據りて五を得、我は其の一を貪りて五を失ふ。此れ言責の家の大戒なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・再び別人の為に一分を認む舉世囂囂兢兢として相安んずるを得ざるは、只だ是れ死に抵るまで自家の不是沒きのみ。若し只だ自家の不是を把りて都て認め、再び別人の為に一分を認めば、便ち是れ清寧の世界にして、兩つながら言を忘れん。
-
『呻吟語』内篇・修身・處身は薄きに妨げず身に處するは薄きに妨げず、人を待つは厚きに妨げず。己を責むるは厚きに妨げず、人を責むるは薄きに妨げず。
-
『呻吟語』外篇・人情・只だ回頭して一句の錯を自家に任ず兩人相ひ非とせば、家を破らずんば止まず。只だ回頭して一句の錯を自家に任ぜば、便ち是れ無邊の受用なり。兩人自ら是とせば、面を反し唇を稽せずんば止まず。只だ溫語もて人を一句好しと稱せば、便ち是れ無限の歡欣なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・人を責むるは含蓄を要す人を責むるは含蓄を要す、太だ盡くすを忌む。委婉を要す、太だ直きを忌む。疑似を要す、太だ真なるを忌む。
-
『呻吟語』内篇・應務・責善の六戒善を責むるは其の人の何如を看るを要す。其の人善を以て責む可くんば、又た當に自ら長を善くし失を救ふの道を盡くすべし。其の忌む所を指摘する無かれ、其の失する所を盡數する無かれ、人に對する無かれ、峭直なる無かれ、長言する無かれ、累言する無かれ。此の六戒を犯さば、忠告と雖も、善道に非ざるなり。其の聽かれざれば、我も亦た且つ過ち有り。何を以て人を責めん。