呻吟語 / 内篇・存心・又久久にして來たれば只だ天の知るを求む
吾初念只怕天知,久久來不怕天知,又久久來只求天知。但未到那何必天知地步耳。
新字:吾初念只怕天知,久久来不怕天知,又久久来只求天知。但未到那何必天知地歩耳。
書き下し
吾が初念は只だ天の知るを怕る。久久にして來たれば天の知るを怕れず。又久久にして來たれば只だ天の知るを求む。但だ未だ那の何ぞ必ずしも天の知らんやの地步に到らざるのみ。
現代語訳
私の初めの思いは、ただ天に知られることを恐れるものでした。長い年月を経ると、天に知られることを恐れなくなりました。さらに長い年月を経ると、ただ天に知られることを求めるようになりました。ただ、どうして天に知られる必要があろうか、という境地にはまだ至っていないだけです。
解説
自分の変化が四段で記されます。天に知られるのを恐れる、恐れなくなる、知られることを求める、そして知られる必要もなくなる。四段目だけがまだ自分には無いと断るのが正直です。恐れから求めへ、さらに無関心へという順序で、監視を意識する段階から自足する段階への移り変わりが示されます。到達を語らないところに、序の構えが貫かれています。
この章句が説くこと
天知段階恐れ希求自足
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・談道・一の求むる心有らば、便ち是れ偽なり朱子云ふ、「人に知らるるを求めずして、天に知らるるを求む」と。初學の為に言ふなり。君子の善を為すは、只だ性中當に此くのごとくなるべきが為なり。或いは此の心過ぎ去らざればなり。天知り、地知り、人知り、我知るは、渾て是れ求めざる底なり。一の求むる心有らば、便ち是れ偽なり。求めて得ざれば、此の念定めて是れ衰歇せん。
-
『呻吟語』内篇・修身・名跡は一に去來に任す近ごろ看來たるに、太だ執著し、大いに矯激なり。只だ無心自然を以て其の可に當たるを求むるのみ。名跡は一に去來に任せ、照管するを須ひず。
-
『呻吟語』内篇・存心・事事己見を執らず、樂しみて諸を人に取る念念天の知る可きは、其の我に在るを盡くすなり。事事己見を執らざるは、樂しみて諸を人に取るなり。
-
『呻吟語』内篇・存心・君子は天を畏れて人を畏れず君子は天を畏れて人を畏れず。名教を畏れて刑罰を畏れず。不義を畏れて不利を畏れず。徒生を畏れて生を捨つるを畏れず。
-
『呻吟語』内篇・存心・這れ是れ一副の甚の心腸ぞ惡を為して惟だ人の知るを恐れ、善を為して惟だ人の知らざるを恐る。這れ是れ一副の甚の心腸ぞ。安んぞ長進を得んや。
-
『呻吟語』内篇・存心・渾身都て是れ過失なるを見る心を存せざれば、自家の不是を看出だす能はず。只だ動靜語默、物に接し事に應ずる時に於いて、件件に一たび想ひ想ふれば、便ち渾身都て是れ過失なるを見る。須らく動けば天則に合ひ、然る後に是と為すべし。日用の間、如何ぞ一時も疏忽し得んや。學者之を思へ。