呻吟語 / 外篇・治道・此の三人は皆な憐れむ可し
旁觀者不論其官之稱不稱,人之宜不宜,而以資淺議驟遷,以格卑議冒進,皆視官為富貴之物,而不知富貴之也,欲以何用?果朝廷為天下求人耶?抑君相為士人擇官耶?此三人者,皆可憐也。叔季之世生人,其識見固如此可笑也!
新字:旁観者不論其官之称不称,人之宜不宜,而以資浅議驟遷,以格卑議冒進,皆視官為富貴之物,而不知富貴之也,欲以何用?果朝廷為天下求人耶?抑君相為士人択官耶?此三人者,皆可憐也。叔季之世生人,其識見固如此可笑也!
書き下し
旁觀者は其の官の稱ふと稱はざるとを論ぜず、人の宜しきと宜しからざるとを論ぜずして、資淺きを以て驟遷を議し、格卑きを以て冒進を議す。皆な官を視て富貴の物と為して、之を富貴にするを知らず。何の用を以てせんと欲するか。果たして朝廷天下の為に人を求むるか。抑も君相士人の為に官を擇ぶか。此の三人は、皆な憐れむ可きなり。叔季の世の生人は、其の識見固より此の如く笑ふ可きなり。
現代語訳
傍で見ている者は、官にふさわしいかどうか、人が適しているかどうかを論じず、経歴が浅いことを理由に急な昇進だと議論し、格が低いことを理由に押し進んだと議論します。みな官を富貴の物と見て、それを富貴にする意味を知りません。何に使おうというのでしょうか。本当に朝廷が天下のために人を求めているのでしょうか。それとも君と宰相が士人のために官を選んでいるのでしょうか。この三者は、みな憐れむべきです。末の世に生まれた人の見識は、もとよりこのように笑うべきものです。
解説
前の段の二者に、傍観者を加えて三者とします。傍観者も適性を論じず、経歴の浅さと格の低さだけを論じる。与える側、受ける側、見る側の全員が、官を富貴の物として扱っているわけです。そして根本の問いが出されます。天下のために人を求めているのか、士人のために官を選んでいるのか。目的が入れ替わっていることを、一句で突いた一段です。
この章句が説くこと
傍観者資格適性目的転倒三者
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