呻吟語 / 内篇・問學・一部の千字文も終身受用し盡くさず
要體認,不須讀盡古今書,只一部《千字文》,終身受用不盡。要不體認,即三墳以來卷卷精熟,也只是個博學之士,資談口、侈文筆、長盛氣、助驕心耳。故君子貴體認。
新字:要体認,不須読尽古今書,只一部《千字文》,終身受用不尽。要不体認,即三墳以来巻巻精熟,也只是個博学之士,資談口、侈文筆、長盛気、助驕心耳。故君子貴体認。
書き下し
體認せんと要せば、古今の書を讀み盡くすを須ひず。只だ一部の《千字文》も、終身受用し盡くさず。體認せざらんと要せば、即ち三墳以來卷卷精熟するも、也た只だ是れ個の博學の士なり。談口に資し、文筆を侈り、盛氣を長じ、驕心を助くるのみ。故に君子は體認を貴ぶ。
現代語訳
体で会得しようとするなら、古今の書を読み尽くす必要はありません。千字文一冊だけでも、一生かけて使い切れません。体で会得しようとしないなら、太古以来の書を一巻ずつ精しく読み込んでも、ただの博学の士にすぎません。話の種になり、文章を飾り、気を盛んにし、驕りを助けるだけです。だから君子は体で会得することを貴びます。
解説
読書量と会得を、正面から切り離します。千字文一冊で一生足りるという極端な言い方が効いていて、量が問題ではないと分かります。そして会得しない読書の行き先が四つ挙げられ、話の種、文飾、気の高ぶり、驕り。どれも学んだ結果として悪化している項目です。読書が人を悪くする道筋まで描いた一段になっています。読書が人を悪くする道筋まで描いているのが特徴です。
この章句が説くこと
体認読書量博学驕り会得
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・問學・一二語も受用し盡くさず聖人の千言萬語、經史の千帙萬卷は、都て是れ人に好きを學ばしめ、人の非を為すを禁ずるなり。若し先哲を以て依歸と為し、前言を以て律令と為さば、即ち一二語も受用し盡くさず。若し依舊として世上の人と作り、或いは更に污下ならば、即ち蒼頡以來の書を將て讀み盡くすも、也た只だ是れ個の學問無き底の人なり。
-
『呻吟語』内篇・問學・誦する底は古人の語、做す底は自家の人讀書人の最も怕るるは、誦する底は是れ古人の語、做す底は是れ自家の人なり。這等の讀書は閉戶十年、破卷五車と雖も、甚麼の用をか成さん。
-
『呻吟語』内篇・問學・學は擇ぶ有るを貴ぶ百家を羅ぬる者は、浩瀚の詞多し。一家に工みなる者は、獨詣の語有り。學者限り有るの目力を以て、其の律涯を竟へんと欲し、鹵莽の心思を以て、其の蘊奧を探らんと欲す。豈に難からずや。故に學は擇ぶ有るを貴ぶ。
-
『呻吟語』内篇・存心・士の尊ぶ可く貴ぶ可き所以は、道有るを以てなり讀書人は只だ是れ個の氣高くして、人の己を尊ぶを欲し、志卑くして、人の己を利するを欲す。便ち是れ至愚極陋なり。只だ四書六經の千言萬語、人に教ふるは是くのごとくなるか是くのごとくならざるかを看よ。士の尊ぶ可く貴ぶ可き所以は、道有るを以てなり。這般の見識、什麼の尊貴す可き處か有らん。小子之を戒めよ。
-
『呻吟語』内篇・問學・別に題目を尋ぬるを必せず講學の人は別に題目を尋ぬるを必せず。只だ四書六經を將て聖賢の道を發明し得て精盡し、心得有らんとす。此の心默かに千古に契へば、便ち是れ真正の學問なり。
-
『呻吟語』内篇・修身・口に詩書して心は眾人胸中に一個の見識有らば、則ち紛雜の說に惑はず。一段の道理有らば、則ち鄙俗の見に撓まず。平生聖賢の書を讀み、某の事は之と合し、某の事は之と背くと、即ち適從する所を知り、去取する所を知る。否らざれば口に《詩》《書》して心は眾人なり、身は儒の衣冠にして行ひは鄙夫なり。此れ士の稂莠なり。