呻吟語 / 外篇・治道・其の苦しむ所を樂しむ
做官都是苦事,為官是苦人,官職高一步,責任便大一步,憂勤便增一步。聖人胼手胝足,勞心焦思,惟天下之安而後樂,是樂者,樂其所苦者也。眾人快欲適情,身尊家潤,惟富貴之得而後樂,是樂者,樂其所樂者也。
新字:做官都是苦事,為官是苦人,官職高一歩,責任便大一歩,憂勤便增一歩。聖人胼手胝足,労心焦思,惟天下之安而後楽,是楽者,楽其所苦者也。眾人快欲適情,身尊家潤,惟富貴之得而後楽,是楽者,楽其所楽者也。
書き下し
官を做すは都て是れ苦事、官為るは是れ苦人なり。官職一步高ければ、責任便ち一步大なり。憂勤便ち一步增す。聖人は手を胼らせ足を胝にし、心を勞し思ひを焦がし、惟だ天下の安くして後に樂しむ。是の樂しみは、其の苦しむ所を樂しむ者なり。眾人は欲を快くし情に適ひ、身尊く家潤ひ、惟だ富貴を得て後に樂しむ。是の樂しみは、其の樂しむ所を樂しむ者なり。
現代語訳
官をやるのはすべて苦しい事で、官であるとは苦しむ人です。官職が一段高ければ、責任も一段大きく、憂え勤めることも一段増します。聖人は手に胼胝を作り足に胼胝を作り、心を労し思いを焦がし、ただ天下が安らいで後に楽しみます。この楽しみは、苦しむところを楽しむものです。大勢の人は欲を快くし情にかない、身が尊く家が潤い、ただ富貴を得て後に楽しみます。この楽しみは、楽しむところを楽しむものです。
解説
官職を、苦しみとして定義します。一段高ければ責任も憂いも一段増える。位と負担が比例するわけです。そして楽しみの二種類が対比されます。聖人は苦しむところを楽しみ、大勢は楽しむところを楽しむ。同じ楽しみという語でも、出どころが正反対です。前に出てきた、高位は重荷であって栄誉ではないという段と同じ主張が、感情の側から述べられた一段になっています。
この章句が説くこと
官苦責任楽しみ出どころ
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