呻吟語 / 外篇・廣喻・我只だ是れ錢を積むのみ
某嘗入一富室,見四海奇珍山積,曰:「某物予取諸蜀,某物予取諸越,不遠數千里,積數十年以有今日。」謂予:「公有此否?」曰:「予性無所嗜,設有所嗜,則百物無足而至前。」問:「何以得此?」曰:「我只是積錢。」
新字:某嘗入一富室,見四海奇珍山積,曰:「某物予取諸蜀,某物予取諸越,不遠数千里,積数十年以有今日。」謂予:「公有此否?」曰:「予性無所嗜,設有所嗜,則百物無足而至前。」問:「何以得此?」曰:「我只是積銭。」
書き下し
某嘗て一富室に入る。四海の奇珍山積するを見る。曰く、「某物は予諸を蜀に取り、某物は予諸を越に取る。數千里を遠しとせず、數十年を積みて以て今日有り」と。予に謂ふ、「公に此れ有りや否や」と。曰く、「予が性は嗜む所無し。設し嗜む所有らば、則ち百物は足らずして前に至る無し」と。問ふ、「何を以て此れを得たるか」と。曰く、「我只だ是れ錢を積むのみ」と。
現代語訳
私はかつてある富家に入りました。四方の珍しい品が山積みになっているのを見ました。主人は言いました。この品は蜀から取り、あの品は越から取りました。数千里を遠いとせず、数十年を積み重ねて今日があります。私に尋ねました。あなたにこれがありますか。答えて言う。私の性には好むものがありません。もし好むものがあれば、あらゆる品が足りないほど目の前に来るでしょう。尋ねました。どうやってそれを得たのですか。答えて言う。私はただ銭を貯めているだけです。
解説
珍品を数十年かけて集めた主人と、著者の問答です。著者は好むものが無いと言い、もし好めばいくらでも集まると答えます。そして集め方を尋ねられ、銭を貯めているだけだと答えます。集めないことが最も集める力になるという逆説で、好みを持たないことが蓄えを生むという、静かな切り返しになっています。集めないことが、最も集める力になるという逆説です。好みを持たないことが、蓄えを生むと示されます。
この章句が説くこと
珍品好み無嗜蓄え逆説
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