呻吟語 / 外篇・治道・雷霆霜雪備はらずんば天を成すに足らず
迂儒識見,看得二帝三王事功,只似陽春雨露,嫗煦可人,再無一些冷落嚴肅之氣。便是慈母,也有訶罵小兒時,不知天地只恁陽春,成甚世界?故雷霆霜雪不備,不足以成天;威怒刑罰不用,不足以成治。只五臣耳,還要一個臯陶。而二十有二人,猶有四凶之誅。今只把天德王道看得恁秀雅溫柔,豈知殺之而不怨,便是存神過化處。目下作用,須是汗吐下後,服四君子四物百十劑,才是治體。
新字:迂儒識見,看得二帝三王事功,只似陽春雨露,嫗煦可人,再無一些冷落厳粛之気。便是慈母,也有訶罵小児時,不知天地只恁陽春,成甚世界?故雷霆霜雪不備,不足以成天;威怒刑罰不用,不足以成治。只五臣耳,還要一個皋陶。而二十有二人,猶有四凶之誅。今只把天徳王道看得恁秀雅温柔,豈知殺之而不怨,便是存神過化処。目下作用,須是汗吐下後,服四君子四物百十剤,才是治体。
書き下し
迂儒の識見は、二帝三王の事功を看得るに、只だ陽春雨露の嫗煦人に可なるに似て、再び一些の冷落嚴肅の氣無し。便ち是れ慈母も、也た小兒を訶罵する時有り。知らず、天地只だ恁の陽春ならば、甚の世界をか成さん。故に雷霆霜雪備はらずんば、以て天を成すに足らず。威怒刑罰用ひずんば、以て治を成すに足らず。只だ五臣のみ、還ほ一個の臯陶を要す。而して二十有二人、猶ほ四凶の誅有り。今只だ天德王道を把りて恁く秀雅溫柔と看得るは、豈に殺して怨まざるが、便ち是れ存神過化の處なるを知らんや。目下の作用は、須らく是れ汗吐下の後、四君子四物の百十劑を服して、才めて是れ治の體なるべし。
現代語訳
古臭い儒者の見識は、二帝三王の事業を、春の陽と雨露が人を温めるようなものとしか見ず、少しの冷たさや厳しさの気もありません。慈母でさえ、小児を叱りつけるときがあります。天地がそんな春ばかりなら、どんな世界ができるでしょうか。だから雷や霜や雪が備わらなければ、天を成すに足りません。威と怒りと刑罰を用いなければ、治を成すに足りません。五人の臣だけでも、なお皋陶が一人要ります。二十二人いても、なお四凶の誅がありました。今ただ天の徳と王の道をそんなに麗しく温柔と見るのは、殺されても怨まないことこそが神を存し化して過ぎるところだと知らないのです。目下の処置は、汗を出し吐かせ下してから、四君子湯と四物湯を百十剤服して、それでようやく治の体です。
解説

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