呻吟語 / 外篇・廣喻・我無き故なり
火性空,故以蘭麝投之則香,以毛骨投之則臭;水性空,故烹茶清苦,煮肉則腥羶,無我故也。無我故能物物,若自家有一種氣味雜於其間,則物矣。物與物交,兩無賓主,同歸於雜。如煮肉於茶,投毛骨於蘭麝,是謂渾淆駁雜。物且不物,況語道乎?
新字:火性空,故以蘭麝投之則香,以毛骨投之則臭;水性空,故烹茶清苦,煮肉則腥羶,無我故也。無我故能物物,若自家有一種気味雑於其間,則物矣。物与物交,両無賓主,同帰於雑。如煮肉於茶,投毛骨於蘭麝,是謂渾淆駁雑。物且不物,況語道乎?
書き下し
火性は空なり。故に蘭麝を以て之に投ずれば則ち香り、毛骨を以て之に投ずれば則ち臭し。水性は空なり。故に茶を烹れば清苦、肉を煮れば則ち腥羶なり。我無き故なり。我無ければ故に能く物を物とす。若し自家に一種の氣味有りて其の間に雜ざらば、則ち物なり。物と物と交はり、兩つながら賓主無くんば、同じく雜に歸す。肉を茶に煮、毛骨を蘭麝に投ずるが如きは、是れを渾淆駁雜と謂ふ。物すら且つ物とせず、況んや道を語らんや。
現代語訳
火の性は空です。だから蘭や麝香を投じれば香り、毛や骨を投じれば臭う。水の性は空です。だから茶を煮れば清く苦く、肉を煮れば生臭い。自分が無いからです。自分が無いから物を物として現せます。もし自分に一種の匂いがあってそこに混ざれば、それも一つの物になります。物と物が交わり、双方に主も客も無ければ、ともに混濁に帰します。肉を茶で煮たり、毛や骨を蘭や麝香に投じたりするのが、混じり濁ると言われるものです。物すら物として現せないのに、まして道を語れるでしょうか。
解説
火と水が何でも現せるのは、自分の性質を持たないからだと説きます。空だから、入れたものがそのまま出てきます。もし自分に匂いがあれば、それも一つの物になって混ざるだけです。そうなると主も客も無く、ただの混濁になります。器としての無我を、調理の例で説明した一段で、道を語る資格にまで繋げられています。器としての無我が、調理の例で説かれています。
この章句が説くこと
空無我火水混濁器
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