呻吟語 / 外篇・治道・舊規は百世變ぜず
近日居官,動說舊規,彼相沿以來,不便於己者悉去之,便於己者悉存之,如此,舊規百世不變。只將這念頭移在百姓身上,有利於民者悉修舉之,有害於民者悉掃除之,豈不是居官真正道理。噫!利於民生者皆不便於己,便於己者豈能不害於民?從古以來,民生不遂,事故日多,其由可知己。
新字:近日居官,動説旧規,彼相沿以来,不便於己者悉去之,便於己者悉存之,如此,旧規百世不変。只将這念頭移在百姓身上,有利於民者悉修舉之,有害於民者悉掃除之,豈不是居官真正道理。噫!利於民生者皆不便於己,便於己者豈能不害於民?従古以来,民生不遂,事故日多,其由可知己。
書き下し
近日官に居るに、動もすれば舊規を說く。彼の相ひ沿ひて以來、己に便ならざる者は悉く之を去り、己に便なる者は悉く之を存す。此の如くんば、舊規は百世變ぜず。只だ這の念頭を將て百姓の身上に移し、民に利有る者は悉く之を修舉し、民に害有る者は悉く之を掃除せば、豈に是れ官に居るの真正の道理ならずや。噫、民生に利ある者は皆な己に便ならず。己に便なる者は豈に能く民に害あらざらんや。古より以來、民生遂げず、事故日に多し。其の由知る可きのみ。
現代語訳
近ごろ官に居る者は、何かにつけて古い決まりを言います。受け継がれてきたもののうち、自分に都合の悪いものはすべて除き、自分に都合のよいものはすべて残します。それなら古い決まりは百代変わりません。この心を民の身の上に移し、民に利のあるものをすべて立て直し、民に害のあるものをすべて掃除すれば、それこそ官に居る本当の道理ではないでしょうか。ああ、民の暮らしに利のあるものはみな自分に都合が悪い。自分に都合のよいものが、どうして民に害が無いでしょうか。昔から民の暮らしが遂げられず、事故が日に多い。その理由が分かります。
解説
古い決まりを言う人が、実は選り分けていると指摘します。都合の悪いものは除き、よいものは残す。だから古い決まりは永久に変わりません。そして同じ選り分けを民の側でやれと言います。さらに厳しいのは最後の一句で、民に利のあるものは自分に都合が悪いとされる点です。二つが両立しないと言い切ることで、逃げ道が塞がれています。
この章句が説くこと
旧規選り分け都合民の利両立せず
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