呻吟語 / 内篇・應務・何ぞ別に意見を生じて聰明を作さんや
事有可以義起者,不必泥守舊例;有可以獨斷者,不必觀望眾人。若舊例當,眾人是,莫非胸中道理而彼先得之者也,方喜舊例免吾勞,方喜眾見印吾是,何可別生意見以作聰明哉?
新字:事有可以義起者,不必泥守旧例;有可以独断者,不必観望眾人。若旧例当,眾人是,莫非胸中道理而彼先得之者也,方喜旧例免吾労,方喜眾見印吾是,何可別生意見以作聰明哉?
書き下し
事に義を以て起こす可き者有らば、必ずしも舊例を泥守せず。獨斷す可き者有らば、必ずしも眾人を觀望せず。若し舊例當たり、眾人是ならば、胸中の道理に非ざる莫くして彼先づ之を得たる者なり。方に舊例の吾が勞を免るるを喜び、方に眾見の吾が是を印するを喜ぶ。何ぞ別に意見を生じて以て聰明を作す可けんや。
現代語訳
義によって新しく起こすべき事があるなら、古い例を守り抜く必要はありません。独断すべき事があるなら、大勢の顔色をうかがう必要はありません。しかし古い例が当たっていて、大勢が正しいなら、それは自分の胸の中の道理と同じものを、相手が先に掴んでいたということです。古い例が自分の手間を省いてくれたことを喜び、大勢の見方が自分の正しさを裏づけてくれたことを喜べばよい。どうして別の意見を持ち出して、賢さを見せる必要があるでしょうか。
解説
前例と多数意見を、守るべきものとも破るべきものともしません。基準は義と道理であって、一致していれば喜んで従えばよいというのです。とくに、前例が手間を省いてくれたことを喜べという言い方が面白い。独自性を示すために違う意見を出す、という動機を封じた一段になっています。独自性を示すために違う意見を出す動機を、封じています。
この章句が説くこと
前例多数独断独自性義
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