呻吟語 / 内篇・存心・進退の間に審らかにするのみ
欲,只是有進氣無退氣;理,只是有退氣無進氣。善學者,審於進退之間而已。
新字:欲,只是有進気無退気;理,只是有退気無進気。善学者,審於進退之間而已。
書き下し
欲は、只だ是れ進む氣有りて退く氣無し。理は、只だ是れ退く氣有りて進む氣無し。善く學ぶ者は、進退の間に審らかにするのみ。
現代語訳
欲には、進む気ばかりあって退く気がありません。理には、退く気ばかりあって進む気がありません。よく学ぶ者は、進むか退くかのあいだをはっきり見分けるだけです。
解説
欲と理が、進退という一つの物差しで見分けられます。欲は前へ出たがり、理は引きたがる。だからどちらへ動きたいかを見れば、どちらが働いているかが分かる、と。善悪の内容ではなく方向で判別するので、その場で使える簡便な検査になります。よく学ぶ者はこの見分けだけをする、と言い切るのも潔い一段です。欲を悪と決めつけずに、動く向きだけで見分けるところが実際的です。
この章句が説くこと
欲理進退判別方向
関連する章句
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『呻吟語』内篇・應務・理を貶せず、又た人を駭かさず君子の事に處するに真見有るも、遽かに行はざるなり。又た眾見を驗し、眾情を察し、諸を理に協へて協ひ、諸を眾情・眾見に協へて協へば、則ち斷じて以て必ず行ふ。果たして理は當然にして、眾情・眾見の協はざるや、又た委曲して以て吾が理を行ふ。既に理を貶せず、又た人を駭かさず。此れを之れ理術と謂ふ。噫、惟だ聖人のみ之を能くす。獵較の類是れなり。
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『呻吟語』外篇・品藻・惟だ其の理のみ勢の為す可からずして猶ほ之を為す者有るは、惟だ其の理のみ。此を知らば則ち三仁は五臣と事功を比す可く、孔子は堯・舜と政治を較ぶ可し。
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『呻吟語』内篇・談道・理一にして氣・勢・利は三なり先天は、理のみ。後天は、氣のみ。天下は、勢のみ。人情は、利のみ。理は一にして、氣・勢・利は三なり。勝負知る可し。
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『呻吟語』内篇・應務・理を推して是れ視る時勢を以て理を低昂する者は、眾人なり。理を以て時勢を低昂する者は、賢人なり。理を推して是れ視、低昂する所無き者は、聖人なり。
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『呻吟語』内篇・談道・勢は帝王の權、理は聖人の權公卿朝に爭議するに、天子に命有りと曰へば、則ち屏然として敢へて屈直せず。師儒學に相辯ずるに、孔子に言有りと曰へば、則ち寂然として敢へて異同せず。故に天地の間、惟だ理と勢とを最尊と為す。然りと雖も、理は又尊の尊なり。廟堂の上に理を言へば、則ち天子も勢を以て相奪ふを得ず。即し相奪ふとも、理は則ち常に天下萬世に伸ぶ。故に勢は、帝王の權なり。理は、聖人の權なり。帝王に聖人の理無くんば、則ち其の權時有りて屈す。然らば則ち理なる者は、又勢の恃みて以て存亡を為す所なり。莫大の權を以て僭竊の禁無し。此れ儒者の辭せずして敢へて斯道の南面に任ずる所以なり。
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『呻吟語』内篇・存心・君子は理を畏るること法を畏るるより甚だし法に罪を得るは、尚ほ逃避す可し。理に罪を得るは、更に身を存する處無し。只だ我が底の心、便ち我を放し過ごさず。是の故に君子は理を畏るること法を畏るるより甚だし。