呻吟語 / 外篇・品藻・惟だ時中の聖のみ
正直者必不忠厚,忠厚者必不正直。正直人植綱常扶世道,忠厚人養和平培根本。然而激天下之禍者,正直之人;養天下之禍者,忠厚之過也。此四字兼而有之,惟時中之聖。
書き下し
正直なる者は必ず忠厚ならず、忠厚なる者は必ず正直ならず。正直の人は綱常を植ゑ世道を扶く。忠厚の人は和平を養ひ根本を培ふ。然れども天下の禍を激する者は、正直の人なり。天下の禍を養ふ者は、忠厚の過なり。此の四字を兼ねて之を有つは、惟だ時中の聖のみ。
現代語訳
正直な者は必ずしも情に厚くなく、情に厚い者は必ずしも正直ではありません。正直な人は綱常を打ち立て世の道を支えます。情に厚い人は和らぎを養い根本を培います。しかし天下の禍を激しくするのは正直な人であり、天下の禍を養うのは情の厚さが過ぎることです。この四字を兼ね備えているのは、時にかなった聖人だけです。
解説
正直と忠厚を、両立しにくい二つの徳として扱います。それぞれに効き目があり、それぞれに害もある。正直は禍を激しくし、忠厚は禍を育てる。良い面と悪い面を対称に並べたうえで、両方を兼ねるのは聖人だけだとします。どちらかに偏っている自覚を促す一段になっています。どちらかに偏っている自覚を、促す一段になっています。
この章句が説くこと
正直忠厚両立害偏り
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