呻吟語 / 内篇・應務・作者の勞を思ひ、供者の苦を思ふ
大廈高堂,如何該我住居?安車駟馬,如何該我乘坐?獲飽暖之休,思作者之勞;享尊榮之樂,思供者之苦,此士大夫日夜不可忘情者也。不然,其負斯世斯民多矣。
新字:大廈高堂,如何該我住居?安車駟馬,如何該我乗坐?獲飽暖之休,思作者之労;享尊栄之楽,思供者之苦,此士大夫日夜不可忘情者也。不然,其負斯世斯民多矣。
書き下し
大廈高堂は、如何ぞ該に我住居すべき。安車駟馬は、如何ぞ該に我乘坐すべき。飽暖の休を獲れば、作者の勞を思ひ、尊榮の樂を享くれば、供者の苦を思ふ。此れ士大夫の日夜情を忘る可からざる者なり。然らずんば、其の斯の世斯の民に負くこと多し。
現代語訳
大きな家と高い堂に、どうして自分が住んでよいのでしょうか。楽な車と四頭立ての馬に、どうして自分が乗ってよいのでしょうか。飽きるほど食べ暖かく過ごす安らぎを得たら、作った者の労を思い、尊く栄えある楽しみを受けたら、差し出した者の苦しみを思う。これが士大夫が昼も夜も忘れてはならない心です。そうでなければ、この世とこの民に対する負い目が積もります。
解説
前の段の問いを、自分の暮らしに向けます。大きな家、四頭立ての馬。どれも自分が作ったものではありません。そして二つの想起が課されます。安らぎを得たら作った者の労を、栄誉を受けたら差し出した者の苦を思う。受け取るたびに出どころを思い出すという習慣で、忘れれば負い目が積もると結ばれます。受け取るたびに、出どころを思い出すという習慣です。
この章句が説くこと
受益労働士大夫負い目想起
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