呻吟語 / 外篇・治道・民情甚だ鬱す可からず
民情甚不可鬱也。防以鬱水,一決則漂屋推山;炮以鬱火,一發則碎石破木。桀、紂鬱民情而湯、武通之,此存亡之大機也。有天下者之所夙夜孜孜者也。
新字:民情甚不可鬱也。防以鬱水,一決則漂屋推山;炮以鬱火,一発則砕石破木。桀、紂鬱民情而湯、武通之,此存亡之大機也。有天下者之所夙夜孜孜者也。
書き下し
民情は甚だ鬱す可からざるなり。防ぎて以て水を鬱すれば、一たび決すれば則ち屋を漂はし山を推す。炮して以て火を鬱すれば、一たび發すれば則ち石を碎き木を破る。桀・紂は民情を鬱して、湯・武之を通ず。此れ存亡の大機なり。天下を有つ者の夙夜孜孜たる所なり。
現代語訳
民の情はひどく塞いではいけません。堤で水を塞げば、ひとたび決壊すれば家を流し山を押し崩します。火薬で火を塞げば、ひとたび発すれば石を砕き木を破ります。桀と紂は民の情を塞ぎ、湯と武はそれを通しました。これが存亡の大きな機です。天下を持つ者が朝から晩まで努めるところです。
解説
塞ぐことの危険を、水と火薬の二つで示します。どちらも塞いだ分だけ、決壊と爆発の力になります。閉じ込める力が、そのまま破壊の力に変わるという構図です。そして桀紂と湯武が、塞いだか通したかで対比されます。存亡の分かれ目がそこにあるとされ、通すことが最も優先される務めになります。前に出てきた、塞ぐ者が亡国の罪の筆頭だという段と重なります。
この章句が説くこと
民情塞ぐ決壊爆発通す
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