呻吟語 / 外篇・品藻・君子に似たるの小人
人流品格,以君子小人定之,大率有九等,有君子中君子,才全德備,無往不宜者也。有君子,優於德而短於才者也。有善人,恂雅溫樸,僅足自守,識見雖正,而不能自決,躬行雖力,而不能自保。有眾人,才德識見俱無足取,與世浮沉,趨利避害,祿祿風俗中無自表異。有小人,偏氣邪心,惟己私是殖,苟得所欲,亦不害物。有小人中小人,貪殘陰狠,恣意所極,而才足以濟之,斂怨怙終,無所顧忌。外有似小人之君子,高峻奇絕,不就俗檢,然規模弘遠,小疵常類,不足以病之。有似君子之小人,老詐濃文,善藏巧借,為天下之大惡,占天下之大名,事幸不敗當時,後世皆為所欺而競不知者。有君子小人之間,行亦近正而偏,語亦近道而雜,學圓通便近於俗,尚古樸則入於腐,寬便姑息,嚴便猛鷙。是人也,有君子之心,有小人之過者也,每至害道,學者成之。
新字:人流品格,以君子小人定之,大率有九等,有君子中君子,才全徳備,無往不宜者也。有君子,優於徳而短於才者也。有善人,恂雅温樸,僅足自守,識見雖正,而不能自決,躬行雖力,而不能自保。有眾人,才徳識見倶無足取,与世浮沈,趨利避害,禄禄風俗中無自表異。有小人,偏気邪心,惟己私是殖,苟得所欲,亦不害物。有小人中小人,貪残陰狠,恣意所極,而才足以済之,斂怨怙終,無所顧忌。外有似小人之君子,高峻奇絶,不就俗検,然規模弘遠,小疵常類,不足以病之。有似君子之小人,老詐濃文,善蔵巧借,為天下之大悪,占天下之大名,事幸不敗当時,後世皆為所欺而競不知者。有君子小人之間,行亦近正而偏,語亦近道而雑,学円通便近於俗,尚古樸則入於腐,寛便姑息,厳便猛鷙。是人也,有君子之心,有小人之過者也,毎至害道,学者成之。
書き下し
人の流品格は、君子小人を以て之を定む。大率九等有り。君子中の君子有り、才全く德備はりて往くとして宜しからざる無き者なり。君子有り、德に優れて才に短き者なり。善人有り、恂雅溫樸にして僅かに自ら守るに足る。眾人有り、才德識見俱に取るに足る無し。小人有り、偏氣邪心にして惟だ己が私のみ是れ殖す。小人中の小人有り、貪殘陰狠にして才も以て之を濟すに足る。外に小人に似たるの君子有り、高峻奇絕にして俗檢に就かざるも、規模弘遠なり。君子に似たるの小人有り、老詐濃文にして善く藏し巧みに借り、天下の大惡を為して天下の大名を占む。
現代語訳
人の品格は、君子か小人かで定めます。おおよそ九等あります。君子の中の君子は、才が全く徳も備わり、どこへ行っても差し支えない者です。君子は、徳に優れて才に短い者です。善人は、まことに雅で温かく素朴で、辛うじて自分を守れる者です。大勢の人は、才も徳も識見も取るに足りません。小人は、偏った気と邪な心で自分の私だけを増やします。小人の中の小人は、貪り残酷で陰険なうえ、才もそれを遂げるに足ります。その外に、小人に似た君子がいます。高く険しく奇抜で俗な作法に従いませんが、構えが広く遠い者です。君子に似た小人がいます。老獪で文飾が濃く、巧みに隠し借りて、天下の大悪をなしながら天下の大名を占めます。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・品藻・四種の人名を藏し利を遠ざけ、夙夜汲汲乎として實行する者は、聖人なり。名の為に修め、利の為に勸め、夙夜汲汲乎として實行する者は、賢人なり。名標を占めず、利孔を尋ねず、氣昏く志惰りて、德を荒らし業を廢する者は、眾人なり。虛名を炫らかし、實利を漁りて、內に狡獪の心を存し、陰に鳥獸の行を為す者は、盜賊なり。
-
『呻吟語』外篇・物理・敗俗の書或いは其の要領を撮み、或いは其の雋腴を類す。『四書』、『六經集注』、『通簽』の類の如し。此れを要書と謂ふ。時務に當たり、機宜に中り、之を用ひて物阜かに民安く、功成り事濟る。此れを經世の書と謂ふ。言は理に近しと雖も、陳言を掇拾して、以て經史を羽翼するに足らず、是れを贅書と謂ふ。醫技農卜、生を養ひ患ひを防ぎ、善を勸め惡を懲らす、是れを益人の書と謂ふ。天下國家に關はる無く、身心性命に益無く、語は心に根ざさず、言は皆な世に應じて、當世の務めを妨ぐ、是れを無用の書と謂ふ。又た贅に如かざるは佛老莊列、是れを病道の書と謂ふ。迂儒の腐說、賢智の偏言、是れを雜道の書と謂ふ。淫邪幻誕、機械誇張、是れを敗俗の書と謂ふ。世道の責有る者、毅然として沙汰して之を芟鋤せずんば、其の世教人心の害為るや小さからず。
-
『墨子』非攻下今、還た夫の攻伐を好むの君、乂た其の説を飾りて以て子墨子を非として曰く、攻伐を以て不義と為すは、利物に非ざるか。昔者、禹は有苗を征し、湯は桀を伐ち、武王は紂を伐つ。此れ皆な立ちて聖王と為る。是れ何の故ぞや、と。子墨子曰く、子は未だ吾が言の類を察せず、未だ其の故に明らかならざる者なり。彼は謂う所の攻に非ず、誅と謂うなり。
-
『茶の本』第五章 芸術鑑賞・あまりに分類し過ぎて楽しむことが少ない進化論の盛んであった十九世紀には、人類のことを考えて個人を忘れる習慣が作られた。収集家は一時期あるいは一派を説明する資料を得んことを切望して、ただ一個の傑作が、よく一定の時期あるいは一派のいかなる多数の凡俗な作にもまさって、われわれを教えるものであるということを忘れている。われわれはあまりに分類し過ぎて、あまりに楽しむことが少ない。いわゆる科学的方法の陳列のために、審美的方法を犠牲にしたことは、これまで多くの博物館の害毒であった。
-
孫子・用間篇故に間を用うるに五有り。郷間有り、内間有り、反間有り、死間有り、生間有り。
-
孫子・九地篇これを亡地に投じて然る後に存し、これを死地に陥れて然る後に生く。