呻吟語 / 外篇・廣喻・總て是れ一氣の呼吸
不知天地觀四時,不知四時觀萬物。四時分成是四截,總是一氣呼吸,譬如釜水寒溫熱涼,隨火之有無而變,不可謂之四水。萬物分來是萬種,總來一氣薰陶,譬如一樹花,大小後先,隨氣之完欠而成,不可謂之殊花。
新字:不知天地観四時,不知四時観万物。四時分成是四截,総是一気呼吸,譬如釜水寒温熱涼,随火之有無而変,不可謂之四水。万物分来是万種,総来一気薫陶,譬如一樹花,大小後先,随気之完欠而成,不可謂之殊花。
書き下し
天地を知らずんば四時を觀よ。四時を知らずんば萬物を觀よ。四時は分かちて四截と成るも、總て是れ一氣の呼吸なり。譬へば釜水の寒溫熱涼は、火の有無に隨ひて變ず。之を四水と謂ふ可からず。萬物は分かち來たれば是れ萬種なるも、總て來たれば一氣の薰陶なり。譬へば一樹の花の大小後先は、氣の完欠に隨ひて成る。之を殊花と謂ふ可からず。
現代語訳
天地が分からなければ四季を見なさい。四季が分からなければ万物を見なさい。四季は分ければ四つに切れますが、すべて一つの気の呼吸です。譬えれば釜の水の冷たさ温かさ熱さ涼しさは、火の有無によって変わります。これを四つの水とは言えません。万物は分ければ万の種類ですが、まとめれば一つの気が薫り育てたものです。譬えれば一本の木の花の大小と早い遅いは、気の満ち欠けによって決まります。これを別々の花とは言えません。
解説
分かれて見えるものが一つだという主張を、二つの比喩で支えます。釜の水は火加減で温度が変わるだけで、四種類の水ではありません。一本の木の花も、気の満ち欠けで大小や早晩が違うだけです。そして知り方の順序も示されます。天地が分からなければ四季を、四季が分からなければ万物を見よ。手近なものから遡る道筋になっています。
この章句が説くこと
四時一気釜水一樹の花順序
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・天地・一噓一吸噓氣は內より外に之くなり、吸氣は外より內に之くなり。天地の初めの噓を春と為し、噓し盡くすを夏と為す。故に萬物は噓に隨ひて生長す。天地の初めの吸を秋と為し、吸ひ盡くすを冬と為す。故に萬物は吸に隨ひて收藏す。噓は、上升の陽氣なり、陽は發を主る。吸は、下降の陰氣なり、陰は成を主る。一噓一吸、開闢より以來混沌の後に至るまで、只だ這の一絲の氣なり。毫髮も斷ゆる處有らば、萬物滅し、天地毀る。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・天地萬物は一氣なり四時の氣は、先づ萬物を感ぜしめて、萬物應ず。應ずる所以の者は何ぞや。天地萬物は一氣なればなり。故に春感じて糞壤の氣升り、雨感じて礎石先づ潤ふ。磁石動きて針轉じ、陽燧映じて火生ず。況んや知有るをや。天を格し物を動かすは、只だ是れ這個の道理なり。
-
『呻吟語』外篇・物理・四つの天に非ず春夏秋冬は是れ四個の天ならず、東西南北は是れ四個の地ならず、溫涼寒熱は是れ四個の氣ならず、喜怒哀樂は是れ四個の面ならず。
-
『呻吟語』外篇・天地・天地一歲一呼吸萬物の發生するは、皆な是れ既に溢るるの餘に流る。萬物の收斂するは、皆な是れ既に極まるの後に勞る。天地は一歲に一呼吸して、萬物之に隨ふ。
-
『呻吟語』外篇・天地・盈虛の自然なり一呼一吸、分毫の餘り有るを得ず、分毫の足らざるを得ず。連呼するを得ず、連吸するを得ず。一呼して吸無きを得ず、一吸して呼無きを得ず。此れ盈虛の自然なり。
-
『呻吟語』外篇・天地・生氣は醇濃、殺氣は清爽生氣は醇濃渾濁、殺氣は清爽澄澈なり。生氣は牽戀優柔、殺氣は果決脆斷なり。生氣は寬平溫厚、殺氣は峻隘涼薄なり。故に春氣は絪縕として、萬物以て生じ、夏氣は薰蒸として、萬物以て長じ、秋氣は嚴肅として、萬物以て入り、冬氣は閉藏して、萬物以て亡ぶ。