呻吟語 / 外篇・治道・進賢舉才して自ら恩と為す
進賢舉才而自以為恩,此斯世之大惑也。退不肖之怨,誰其當之?失賢之罪,誰其當之?奉君之命,盡己之職,而公法廢於私恩,舉世迷焉,亦可悲矣。
新字:進賢舉才而自以為恩,此斯世之大惑也。退不肖之怨,誰其当之?失賢之罪,誰其当之?奉君之命,尽己之職,而公法廃於私恩,舉世迷焉,亦可悲矣。
書き下し
賢を進め才を舉げて自ら以て恩と為すは、此れ斯の世の大惑なり。不肖を退くるの怨みは、誰か其れ之に當たらん。賢を失ふの罪は、誰か其れ之に當たらん。君の命を奉じ、己の職を盡くすに、公法私恩に廢れて、世を舉げて迷ふ。亦た悲しむ可し。
現代語訳
賢者を進め才ある者を挙げて、それを自分の恩だとするのは、この世の大きな迷いです。愚かな者を退けた怨みは、誰が引き受けるのでしょうか。賢者を失った罪は、誰が引き受けるのでしょうか。君の命を奉じ自分の職を尽くしているのに、公の法が私的な恩で廃れ、世を挙げて迷っています。悲しむべきことです。
解説
推挙を恩とする慣行を、大きな迷いだと断じます。理由が二つの反問で示されます。退けた者の怨みを誰が引き受けるのか、賢者を見落とした罪を誰が負うのか。恩だと言うなら、怨みと罪も自分のものになるはずです。職を尽くしているだけなのに、恩と数えるから公法が私恩に変わる。人事の私物化を、責任の側から突いた一段です。
この章句が説くこと
推挙恩怨み責任私物化
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