呻吟語 / 内篇・存心・善根に才かに萌蘗を發せば、即ち意を著けて栽培せよ
善根中才發萌蘗,即著意栽培,須教千枝萬葉;惡源處略有涓流,便極力壅塞,莫令暗長潛滋。
新字:善根中才発萌蘗,即著意栽培,須教千枝万葉;悪源処略有涓流,便極力壅塞,莫令暗長潜滋。
書き下し
善根の中に才かに萌蘗を發せば、即ち意を著けて栽培し、須らく千枝萬葉たらしむべし。惡源の處に略ぼ涓流有らば、便ち力を極めて壅塞し、暗に長じ潛かに滋らしむること莫かれ。
現代語訳
善の根から、わずかでも芽が出たなら、すぐに気を配って育て、千の枝万の葉になるまでにしなさい。悪の源のところに、少しでも細い流れがあれば、力を尽くしてせき止め、知らぬ間に伸び、ひそかに茂らせてはなりません。
解説
善と悪で、対応の向きが正反対に示されます。善は芽のうちに育てて千枝万葉まで大きくし、悪は細い流れのうちにせき止める。どちらも最初期に手を打つ点は同じですが、片方は伸ばし片方は止める。植物と水という違う比喩が当てられているのも効果的で、悪は放っておくと地下で育つという性質が、暗に長じ潜かに滋る、という言葉に出ています。
この章句が説くこと
善根萌芽悪源涓流初期
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・存心・原と萌芽せずんば、甚の生機をか說かん原と萌芽せずんば、甚の生機をか說かん。
-
『呻吟語』内篇・存心・此れ萬善の囮なり一善念發せば、未だ擴充を說くに到らずして、且く先づ執持し住めよ。此れ萬善の囮なり。若し隨ひ來たり隨ひ去りて、更に此の心を操存せざれば、驛傳のごとく然り。身を終ふるまで主人の住むこと無からん。
-
『呻吟語』内篇・應務・枝葉を救ふも甚の事をか成し得ん萬弊都て個の由來有り。只だ枝葉を救ふも甚の事をか成し得ん。
-
『呻吟語』内篇・存心・豆を種うれば、其の苗必ず豆なり豆を種うれば、其の苗必ず豆なり。瓜を種うれば、其の苗必ず瓜なり。未だ存する所是くのごとくにして發する所是くのごとくならざる者有らず。心は本と人欲にして事は天理ならんと欲し、心は本と邪曲にして言は正直ならんと欲す、其れ將に能くせんや。是を以て君子は其の存する所を慎む。存する所是なれば、種種皆是なり。存する所非なれば、種種皆非なり。未だ分毫も爽ふ者有らず。
-
『呻吟語』内篇・存心・一念收斂すれば、萬善來たり同ず一念收斂すれば、則ち萬善來たり同ず。一念放恣なれば、則ち百邪釁に乘ず。
-
『呻吟語』内篇・修身・惡を為すに勉強無く、善を為すに自然無し惡を為すには再び個の勉強底沒く、善を為すには再び個の自然底沒し。學者此の念頭を勘破せば、寧ぞ愧ぢ奮はざらんや。