呻吟語 / 内篇・修身・名分を尊ぶと時勢に諂ふ
名分者,天下之所共守者也。名分不立,則朝廷之紀綱不尊而法令不行。聖人以名分行道,曲士恃道以壓名分,不知孔子之道視魯侯奚啻天壤,而《鄉黨》一篇何等盡君臣之禮!乃知尊名分與諂時勢不同,名分所在,一毫不敢傲惰;時勢所在,一毫不敢阿諛。固哉!世之腐儒以尊名分為諂時勢也;卑哉!世之鄙夫以諂時勢為尊名分也。
新字:名分者,天下之所共守者也。名分不立,則朝廷之紀綱不尊而法令不行。聖人以名分行道,曲士恃道以圧名分,不知孔子之道視魯侯奚啻天壤,而《鄉党》一篇何等尽君臣之礼!乃知尊名分与諂時勢不同,名分所在,一毫不敢傲惰;時勢所在,一毫不敢阿諛。固哉!世之腐儒以尊名分為諂時勢也;卑哉!世之鄙夫以諂時勢為尊名分也。
書き下し
名分なる者は、天下の共に守る所の者なり。名分立たざれば、則ち朝廷の紀綱尊ばれずして法令行はれず。聖人は名分を以て道を行ひ、曲士は道を恃みて名分を壓す。知らず、孔子の道は魯侯を視るに奚ぞ啻に天壤のみならんや。而も《鄉黨》一篇は何等にか君臣の禮を盡くせる。乃ち知る、名分を尊ぶと時勢に諂ふとは同じからざることを。名分の在る所は、一毫も敢へて傲惰ならず。時勢の在る所は、一毫も敢へて阿諛せず。
現代語訳
名分とは、天下の人が共に守るものです。名分が立たなければ朝廷の規律は尊ばれず、法令も行われません。聖人は名分によって道を行い、偏った士は道を頼みにして名分を押しつぶします。孔子の道と魯侯を比べれば天と地どころの差ではありません。それでも郷党篇では、どれほど君臣の礼を尽くしていることでしょう。だから分かるのです。名分を尊ぶことと、その時の権勢にへつらうことは別だと。名分のある所では、毛ほども驕らず怠らない。権勢のある所では、毛ほどもへつらわない。
解説
礼儀正しさと、へつらいの違いを腑分けした一段です。孔子は魯侯よりはるかに優れていながら、君臣の礼は尽くした。そこには権力への恐れではなく、共有の枠を守る態度があります。そして最後の二句が明快で、名分には驕らず、権勢にはへつらわない。同じ場面で二つを同時に行うのが、この一段の求める構えです。同じ場面で、驕らずへつらわない構えが求められています。
この章句が説くこと
名分権勢礼追従区別
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