呻吟語 / 内篇・應務・十行九悔
是故不閒則不忙,不逸則不勞。若先怠緩,則後必急躁,是事之殃也。十行九悔,豈得謂之安詳?
新字:是故不閒則不忙,不逸則不労。若先怠緩,則後必急躁,是事之殃也。十行九悔,豈得謂之安詳?
書き下し
是の故に閒ならざれば則ち忙ならず、逸ならざれば則ち勞せず。若し先に怠緩なれば、則ち後必ず急躁なり。是れ事の殃なり。十行九悔は、豈に之を安詳と謂ふを得んや。
現代語訳
だから暇を取らなければ忙しくもならず、休まなければ疲れもしません。もし先に怠けて緩めば、後は必ず慌ただしくなります。これが事にとっての災いです。十のことをして九を悔やむようでは、どうして安詳と言えるでしょうか。
解説
前の段の安詳を、時間の配分から補います。先に緩めば後で慌てる。だから初めの緩みこそが災いの元だというのです。十行九悔という言い方が印象的で、やることなすこと悔やんでいる状態を安詳とは呼べないと断じます。落ち着きは性格ではなく、段取りの結果だという見方になっています。落ち着きは性格ではなく、段取りの結果だという見方です。
この章句が説くこと
段取り怠緩急躁後悔配分
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・應務・閒暇に心を留めず閒暇の時に心を留めて成らざれば、倉卒の時に手を措くを得ず。胡亂に支吾して、其の成敗に任せ、或いは悔い或いは悔いず、事過ぎて後依然として昨の如し。世の人此の如き者は、百人にして百なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・一個の靜定心を將て緩急輕重を酌量す士君子の終身應酬するは一事に止まらず。全て一個の靜定心を將て緩急輕重を酌量して後先と為すを要す。若し轇轕の情に應じ紛雜の事に處するに、都て是れ一味の熱忙にして、顛倒亂應せば、只だ此れ便ち存心定性の功、事に當たり物に處するの法を見ず。
-
『呻吟語』内篇・應務・懶ならず忙ならず忙を休め懶を休め、懶ならず忙ならず。
-
『呻吟語』内篇・應務・果決の人は忙しきに似たり果決の人は忙しきに似たるも、心中常に餘閒有り。因循の人は閒なるに似たるも、心中常に餘累有り。
-
『呻吟語』内篇・應務・從容閒暇の時を贏ち得る君子の事に應じ物に接するは、常に心中に從容閒暇の時有るを贏ち得れば便ち好し。若し應酬の時に勞擾し、應酬せざる時に牽掛せば、極めて是れ累を吃ふなり。
-
『呻吟語』内篇・應務・事の心を累はすに非ず、乃ち心の心を累はすなり某應酬する時に一の大病痛有り。每に事前に疏忽し、事後に點檢す。點檢の後輒ち悔吝す。閒時に慵獺し、忙時に迫急す。迫急の後輒ち差錯す。或るひと曰く、「此れ先後の著を失するのみ」と。肯へて點檢の心を事前に放かば、點檢を省き得、又た悔吝を省き得ん。肯へて急迫の心を閒時に放かば、差錯を省き得、又た牽掛を省き得ん。大率我輩は是れ事の心を累はすに非ず、乃ち是れ心の心を累はすなり。