呻吟語 / 外篇・治道・敢へて怒るの心を懷く
夫民懷敢怒之心,畏不敢犯之法,以待可乘之釁。眾心已離,而上之人且恣其虐以甚之,此桀紂之所以亡也。是以明王推自然之心,置同然之腹,不恃其順我者之跡,而欲得其無怨我者之心。體其意欲而不忍拂,知民之心不盡見之於聲色,而有隱而難知者在也。此所以因結深厚,而子孫終必賴之也。
新字:夫民懐敢怒之心,畏不敢犯之法,以待可乗之釁。衆心已離,而上之人且恣其虐以甚之,此桀紂之所以亡也。是以明王推自然之心,置同然之腹,不恃其順我者之跡,而欲得其無怨我者之心。体其意欲而不忍払,知民之心不尽見之於声色,而有隠而難知者在也。此所以因結深厚,而子孫終必頼之也。
書き下し
夫れ民は敢へて怒るの心を懷き、敢へて犯さざるの法を畏れ、以て乘ず可きの釁を待つ。眾心已に離れて、上の人且つ其の虐を恣にして以て之を甚だしくす。此れ桀紂の亡ぶ所以なり。是を以て明王は自然の心を推し、同然の腹を置き、其の我に順ふ者の跡を恃まずして、其の我を怨む無き者の心を得んと欲す。其の意欲を體して拂ふに忍びず、民の心は盡くは之を聲色に見さずして、隱れて知り難き者の在る有るを知る。此れ因結深厚にして、子孫終に必ず之に賴る所以なり。
現代語訳
民は怒る心を抱きながら、犯してはならない法を畏れ、乗ずべき隙を待ちます。人々の心がすでに離れているのに、上に立つ者はさらに虐げを恣にしてひどくします。これが桀紂の滅んだ理由です。だから明君は自然の心を推し広げ、同じ腹に自分を置き、自分に従う者の外面を頼りにせず、自分を怨まない者の心を得ようとします。その思いを我が身に置いて背くに忍びず、民の心がすべて声や顔色に現れるわけではなく、隠れて知りがたいものがあると知っています。これが結びつきが深く厚く、子孫が最後に必ずそれに頼る理由です。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・品藻・間中都て髮を容れず間中都て髮を容れず。此れ智者の乘ずる所にして、思者の昧き所なり。
-
『武訓』下・第25段敵、川を越來るを待ちて戰ふに、古法に、半渡るをうつといふ。半渡とは、敵川半まで渡り來るとにはあらず。身方は、川ばたより、二三町ほど引退きて、陣をなし、敵の川をこし來るをうつ。敵兵半ば岸よりあがりて、備いまだ定まらず、半ば未だ川中にありて渡る時、此方よりさそひかゝりて、敵の備なきを急にうつて、敵を川に追ひはめうつをいふ。是必、利ある謀なり。大將の旗を立つるに、春夏は、將の左に立て、秋冬は、將の右に立つ。是、陰陽にしたがへるなり。
-
孫子・形篇孫子曰く、昔の善く戦う者は、まず不可勝を為して、以て敵の可勝を待つ。
-
『武訓』下・第10段或武人、敵と我、兩人戰ふ時のこゝろをよめる描き歌あり。「身はすてつ心ばかりははふらさじ人のうごきをまちてぞうつべき」、いふ心は、敵と戰ふにのぞまば、身はすつべし。身をのがれんとおもへば、心みだれ、おそれひるみて、敵にかつべきちからなし。されど、心ひとつは失ふべからず。敵とたゝかふ時に、つねのごとくにして、心をうごかすべからず。わがかたより、みだりにかゝらず、こらへて早くうつべからず。人のうごきをまちて、其のすきまを見て、はやくうつべし、是、敵にかつの道なりといへり、
-
『呻吟語』外篇・廣喻・物に一隙有れば水は一隙に入る石の水に入らざるは、堅ければなり。磁の水に入らざるは、密なればなり。人身の內堅く外密なれば、何の外感か能く入らん。物に一隙有れば、水は即ち一隙に入る。物一寸虛なれば、水は即ち一寸に入る。
-
『武家家訓集』武田信繁家訓九十九箇条「第40〜42条」一、馬の精を入るべき事。論語に云ふ、犬は以て守禦し、馬は以て勞に代はる、能く人を養ふ者なり、と。 一、敵味方打ち向かふ時、未だ定まらざる備への處を擊つべき事。語に云ふ、能く敵に勝つ者は無形に勝つ、と。又曰く、慕ひて家風は擬議を容れず、と。 一、軍の時遠懸すべからざる事。司馬法に曰く、奔を逐ふこと列を踰えず、是を以て軍旅を亂さず固く、行列の政を失はず、人馬の力を施さず、と。