呻吟語 / 外篇・廣喻・大車滿載
大車滿載,蚊蚋千萬集焉,其去其來,無加於重輕也。
新字:大車満載,蚊蚋千万集焉,其去其来,無加於重軽也。
書き下し
大車滿載するに、蚊蚋千萬集まる。其の去るも其の來たるも、重輕に加ふる無きなり。
現代語訳
大きな車が満載しているところに、蚊やぶよが千も万も集まります。去っても来ても、重さには何も加わりません。
解説
満載の大車に蚊が集まる様子を描きます。数がいくら多くても、重さには影響しません。大きな仕事を担っている人にとって、些細な批判や取り巻きが問題にならないという含みでしょう。数の多さが必ずしも力にならないという構図で、前に出てきた、大勢が言うことと正しさは別だという段とも響き合います。数の多さが、必ずしも力にならないという構図です。大きな荷を担う人には、些細な声が届きません。
この章句が説くこと
大車蚊数無影響些事
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・廣喻・各おの其の力を盡くす駝は百鈞を負ひ、蟻は一粒を負ふ。各おの其の力を盡くすなり。象は數石を飲み、鼷は一勺を飲む。各おの其の量を充たすなり。君子の人を用ふるは、其の效の同じきを必ずしもせず。各おの長ずる所を盡くさしむるのみ。
-
『呻吟語』外篇・治道・匹馬單車も鈞天の樂を聽くが如し大纛高牙、鳴金奏管、飛旌卷蓋、清道唱騶あらば、輿中の人は志驕り意得たり。蒼生の疾苦は幾何ぞ。職業の修廢は幾何ぞ。心に愧づる無からしめば、即ち匹馬單車も、鈞天の樂を聽くが如し。然らずんば是れ益ます吾が過ちを厚くするなり。婦人孺子は豈に驚炫せざらんや。恐らくは有道者之を笑はん。故に君子の車服儀從は等威を辨ずるに足るのみ。汲汲とする所は固より自ら在る有り。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・果下車に騏驥を駕す果下車を以て騏驥を駕し、盆池の水を以て蛟龍を養ひ、小廉細謹を以て英雄豪傑を繩するは、善く人を官する者之を笑ふ。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・到り來たれば我と一般なり余少しく車中に憩ふ。既に車を下り、之に戲れて曰く、「君力を費やすこと許の如し。到り來たれば我と一般なり」と。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・其の重きに勝へず他人の首をして我が肩に枕せしめ、他人の身をして我が足に在らしめば、則ち其の重きに勝へず。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・膾炙徹して蠅は太羹に趨く膾炙の處は、蠅飛びて幾に滿つ。而して太羹玄酒には至らず。膾炙日に增して、蠅の太羹玄酒に集まらんことを欲するも、之を驅ると雖も至らざるなり。膾炙徹して蠅は太羹玄酒に趨かざるを得ず。是の故に樸に返り淳に還るは、儉を崇びて其の欲す可きを禁ずるに如くは莫し。