呻吟語 / 外篇・人情・古人の相ひ與する
古人之相與也,明目張膽,推心置腔。其未言也,無先疑;其既言也,無後慮。今人之相與也,小心屏息,藏意飾容。其未言也,懷疑畏;其既言也,觸禍機。哀哉!安得心地光明之君子,而與之披情愫、論肝膈也?哀哉!彼亦示人以光明,而以機阱陷人也。
新字:古人之相与也,明目張胆,推心置腔。其未言也,無先疑;其既言也,無後慮。今人之相与也,小心屏息,蔵意飾容。其未言也,懐疑畏;其既言也,触禍機。哀哉!安得心地光明之君子,而与之披情愫、論肝膈也?哀哉!彼亦示人以光明,而以機阱陥人也。
書き下し
古人の相ひ與するや、明目張膽、心を推し腔に置く。其の未だ言はざるや、先疑無し。其の既に言ふや、後慮無し。今人の相ひ與するや、小心屏息、意を藏し容を飾る。其の未だ言はざるや、疑畏を懷く。其の既に言ふや、禍機に觸る。哀しいかな。安んぞ心地光明の君子を得て、之と情愫を披き肝膈を論ぜんや。哀しいかな。彼も亦た人に示すに光明を以てして、機阱を以て人を陷るるなり。
現代語訳
昔の人の交わりは、目を見開き胆を張り、心を推し出して相手の胸に置きました。まだ言わないうちは先回りの疑いが無く、言ってしまえば後の心配がありません。今の人の交わりは、小心に息を潜め、意を隠し顔を飾ります。まだ言わないうちは疑いと畏れを抱き、言ってしまえば禍の仕掛けに触れます。悲しいことです。どうすれば心の明るい君子を得て、思いを開き腹の底を語れるでしょうか。悲しいことです。その人もまた明るさを人に見せながら、落とし穴で人を陥れるのです。
解説
交わりの様子を、昔と今で対比します。昔は言う前に疑いが無く、言った後に心配が無い。今は言う前に畏れがあり、言った後に禍に触れます。前後どちらも安心が無いわけです。そして光明な君子を求める嘆きが二度繰り返され、最後に暗い一句が置かれます。明るさを見せる人も落とし穴を持っている。求めても見つからないという絶望です。
この章句が説くこと
交わり昔今疑い禍機光明
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