呻吟語 / 外篇・治道・委曲必至の情を體す
王道感人處,只在以我真誠怛惻之心,體其委曲必至之情。
新字:王道感人処,只在以我真誠怛惻之心,体其委曲必至之情。
書き下し
王道の人を感ぜしむる處は、只だ我が真誠怛惻の心を以て、其の委曲必至の情を體するに在り。
現代語訳
王道が人を動かすところは、ただ自分の真実で痛む心をもって、相手の込み入って行き着くはずの情を我が身に置くことにあります。
解説
王道が人を動かす仕組みを、一句で示します。自分の側は真実で痛む心、相手の側は込み入って行き着く情。この二つが噛み合うところが要点です。相手の情を込み入ったものとして扱っているのが特徴で、単純に察するのではありません。前に出てきた、人の心はすべて声や顔色に出ないという段と合わせると、汲む難しさが前提になっていると分かります。
この章句が説くこと
王道真誠委曲体する感化
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・治道・人を我に體す先王の政を為すは、全く人心の上に在りて工夫を用ふ。其の人心を體するは、我が心の上に在りて工夫を用ふ。何者ぞ。同然の故なり。故に先王は人を我に體して、民心得られ、天下治まる。
-
『呻吟語』外篇・治道・誠なるが故なり是の故に賞せずして勸み、激せずして奮ひ、一言を出だして能く人をして其の死命を致さしむるは、誠なるが故なり。
-
『呻吟語』外篇・治道・自然の感無くして徒だに勢ひに迫らる古の聖王は人の情を盡くさず。故に下の忠愛嘗て餘り有り。後世は然らず。平日の君臣相ひ與するは僅かに以て體面を存するに足りて感ず可きの恩無し。甚だしきは或いは其の心に拂ひて逞ぜんと待つの志を壞る。其の大事に趨き大難を犯すに至りては、皆な分の已むを得ざるより出づ。已むを得ざるの心を以て欲せざる所の役に供すれば、臨時に固結すと雖も、猶ほ死して親しまず。而して上の誅求責むること又復た太だ過ぐ。故に其の空名積勢は以て人心を鎮服して其の身國を庇ふに足らず。嗚呼、民に自然の感無くして徒だに已むを得ざるの勢ひに迫られ、君に油然の愛無くして徒だに之を敢へて然らざるを得ざるの威に劫かせば、殆ふいかな。
-
『呻吟語』外篇・人情・其の難言の情を識る人の情は、言然りと雖も意未だ必ずしも然らざる有り、事然りと雖も意未だ必ずしも然らざる者有り。事勢に勉強するに非ずんば、則ち體面に束縛せらる。善く人を體する者は、要は其の難言の情を識りて、其れをして言と事とに苦しむ所と為らしめざるに在り。此れ聖人の人心を感ぜしめて、人樂しみて之が為に死する所以なり。
-
『呻吟語』外篇・治道・純王の心有りて、方に純王の政有り只だ己むを容れざるの真心有らば、自ら易ふ可からざるの良法有り。其の之に處すること未だ當たらざる者は、必ず其の之を思ふこと精しからざる者なり。其の之を思ふこと精しからざる者は、必ず其の心の切ならざる者なり。故に純王の心有りて、方に純王の政有り。
-
『呻吟語』外篇・治道・二人同行するも亦た此の道を離れ得ず善く世に處する者は、人の自然の情を得るを要す。人の自然の情を得ば、則ち何ぞ得ざる所あらん。人の自然の情を失はば、則ち何ぞ失はざる所あらん。惟だ帝王のみ然りと為さず、二人同行すと雖も、亦た此の道を離れ得ず。