呻吟語 / 内篇・應務・謀るの難きに非ず、斷ずるの難きなり
非謀之難,而斷之難也。謀者盡事物之理,達時勢之宜,意見所到不思其不精也,然眾精集而兩可,斷斯難矣。故謀者較尺寸,斷者較毫釐;謀者見一方至盡,斷者會八方取中。故賢者皆可與謀,而斷非聖人不能也。
新字:非謀之難,而断之難也。謀者尽事物之理,達時勢之宜,意見所到不思其不精也,然眾精集而両可,断斯難矣。故謀者較尺寸,断者較毫釐;謀者見一方至尽,断者会八方取中。故賢者皆可与謀,而断非聖人不能也。
書き下し
謀るの難きに非ずして、斷ずるの難きなり。謀る者は事物の理を盡くし、時勢の宜しきを達す。意見の到る所、其の精ならざるを思はざるなり。然れども眾精集まりて兩可なれば、斷ずること斯に難し。故に謀る者は尺寸を較べ、斷ずる者は毫釐を較ぶ。謀る者は一方を見て盡くすに至り、斷ずる者は八方を會して中を取る。故に賢者は皆な與に謀る可く、而して斷は聖人に非ざれば能はざるなり。
現代語訳
謀ることが難しいのではなく、断ずることが難しいのです。謀る者は事物の理を尽くし、時勢のふさわしさに通じます。意見の届くところ、精しくないことはありません。しかし精しい案が集まって、どちらも可となれば、断ずることが難しくなります。だから謀る者は尺や寸を比べ、断ずる者は毛筋の差を比べます。謀る者は一方向を見尽くし、断ずる者は八方を合わせて中を取ります。だから賢者は誰でも共に謀れますが、断ずることは聖人でなければできません。
解説
謀ることと断ずることの難易を逆転させます。良い案はいくらでも出るが、どれも良いからこそ決められない。そして二つの作業の精度と視野の違いが示されます。謀は尺寸で一方向、断は毫釐で八方。だから相談相手は多くてよいが、決める者は稀だという結論になります。決定の難しさを正確に言い当てた一段です。決定の難しさを、正確に言い当てた一段になっています。
この章句が説くこと
謀断決定精度視野
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