呻吟語 / 内篇・談道・並び育して情有らず
山峙川流、鳥啼花落、風清月白,自是各適其天,各得其分。我亦然,彼此無干涉也。才生繫戀心,便是歆羨,便有沾著。主人淡無世好,與世相忘而已。惟並育而不有情,故並育而不相害。
新字:山峙川流、鳥啼花落、風清月白,自是各適其天,各得其分。我亦然,彼此無干渉也。才生繋恋心,便是歆羨,便有沾著。主人淡無世好,与世相忘而已。惟並育而不有情,故並育而不相害。
書き下し
山峙ち川流れ、鳥啼き花落ち、風清く月白きは、自ら是れ各おの其の天に適ひ、各おの其の分を得たるなり。我も亦た然り、彼此干涉無し。才かに繫戀の心を生ずれば、便ち是れ歆羨なり、便ち沾著有り。主人は淡くして世好無く、世と相忘るるのみ。惟だ並び育して情有らず、故に並び育して相害せず。
現代語訳
山がそびえ川が流れ、鳥が鳴き花が散り、風が清く月が白いのは、それぞれが自分の天に適い、自分の分を得ているのです。私もまた同じで、互いに干渉はありません。少しでも執着の心が生じれば、それは羨みであり、べたつきが生まれます。主人たる者は淡くして世の好みを持たず、世と互いに忘れ合うだけです。並んで育ちながら情を持たない、だから並んで育っても互いを害さないのです。
解説
中庸の、万物は並び育って互いを害さないという句を、自分の暮らしの位置取りに読み替えます。山も川も鳥も、それぞれの分を得ているだけで、こちらと干渉していない。その並びに自分も入れるかどうかが分かれ目です。少しでも羨む心が出ればべたつきが生まれる。害さないための条件が、優しさではなく淡さに置かれているのが特徴です。
この章句が説くこと
並育羨み淡泊分距離
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