呻吟語 / 内篇・問學・才學は劍の如し
無才無學,士之羞也;有才有學,士之憂也。夫才學非有之為難,降伏之難。君子貴才學以成身也,非以矜己也;以濟世也,非以誇人也。故才學如劍,當可試之時一試,不則藏諸室,無以衒弄,不然,鮮不為身禍者。自古十人而十,百人而百,無一倖免,可不憂哉?
新字:無才無学,士之羞也;有才有学,士之憂也。夫才学非有之為難,降伏之難。君子貴才学以成身也,非以矜己也;以済世也,非以誇人也。故才学如剣,当可試之時一試,不則蔵諸室,無以衒弄,不然,鮮不為身禍者。自古十人而十,百人而百,無一倖免,可不憂哉?
書き下し
才無く學無きは、士の羞なり。才有り學有るは、士の憂なり。夫れ才學は之を有するを難しと為さず、之を降伏するを難しと為す。君子は才學を貴びて以て身を成すなり、以て己を矜るに非ず。以て世を濟ふなり、以て人に誇るに非ず。故に才學は劍の如し。當に試む可きの時に一たび試み、然らずんば諸を室に藏し、以て衒弄する無かれ。然らずんば、身の禍と為らざる者鮮し。
現代語訳
才が無く学が無いのは士の羞です。才があり学があるのは士の憂いです。才と学は持つことが難しいのではなく、それを抑え伏せることが難しいのです。君子が才と学を貴ぶのは身を成すためであって、自分を誇るためではありません。世を救うためであって、人に誇るためではありません。だから才と学は剣のようなものです。試すべき時に一度試し、そうでなければ室に収めて、見せびらかしてはいけません。そうしなければ、身の禍にならない者はほとんどいません。
解説
才学を持つことを、羞ではなく憂いと呼びます。持てば抑えるという難題が始まるからです。そして剣の比喩で扱い方を示します。使う時が来たら一度使い、それ以外は室にしまう。見せびらかせば禍になる。前に出てきた、鋭さを大らかさの中にしまえという段と同じ処方が、より具体的な道具の話になっています。持てば抑えるという難題が始まる、という見方です。
この章句が説くこと
才学剣抑制誇示禍
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