呻吟語 / 外篇・治道・獨り已む可からざるか
如今天下人,譬之驕子,不敢熱氣,唐突便艴然起怒,縉紳稍加綜核,則曰苛刻;學校稍加嚴明,則曰寡恩;軍士稍加斂戢,則曰凌虐;鄉官稍加持正,則曰踐踏。今縱不敢任怨,而廢公法以市恩,獨不可已乎?如今天下事,譬之敝屋,輕手推扶,便愕然咋舌。今縱不敢更張,而毀拆以滋壞,獨不可已乎?
新字:如今天下人,譬之驕子,不敢熱気,唐突便艴然起怒,縉紳稍加綜核,則曰苛刻;学校稍加厳明,則曰寡恩;軍士稍加斂戢,則曰凌虐;鄉官稍加持正,則曰践踏。今縦不敢任怨,而廃公法以市恩,独不可已乎?如今天下事,譬之敝屋,軽手推扶,便愕然咋舌。今縦不敢更張,而毀拆以滋壊,独不可已乎?
書き下し
如今天下の人は、之を驕子に譬ふ。敢へて熱氣せず、唐突すれば便ち艴然として怒りを起こす。縉紳稍しく綜核を加ふれば、則ち苛刻と曰ふ。學校稍しく嚴明を加ふれば、則ち寡恩と曰ふ。軍士稍しく斂戢を加ふれば、則ち凌虐と曰ふ。鄉官稍しく持正を加ふれば、則ち踐踏と曰ふ。今縱ひ敢へて怨みに任ぜざるも、公法を廢して以て恩を巿るは、獨り已む可からざるか。如今天下の事は、之を敝屋に譬ふ。輕く手して推扶すれば、便ち愕然として舌を咋む。今縱ひ敢へて更張せざるも、毀拆して以て壞を滋すは、獨り已む可からざるか。
現代語訳
今の天下の人は、甘やかされた子に譬えられます。強い言葉を向けられず、少し突き当たるとすぐ怒り出します。官吏に少し点検を加えれば苛刻だと言い、学校に少し厳しさを加えれば恵みが薄いと言い、軍士に少し引き締めを加えれば虐げだと言い、郷官に少し正しさを持たせれば踏みつけだと言います。今たとえ怨みを引き受けられないとしても、公の法を廃して恩を売るのは、せめてやめられないのでしょうか。今の天下の事は、傷んだ家に譬えられます。軽く手で押し支えるだけで、驚いて舌を噛みます。今たとえ改め直せないとしても、壊して傷みを増すのは、せめてやめられないのでしょうか。
解説
甘やかされた子と傷んだ家、二つの比喩で現状を描きます。少し点検すれば苛刻、少し厳しくすれば恵みが薄い。四つの場面で同じ反応が並べられ、批判の語だけが用意されている様子が見えます。そして二度、同じ形で問われます。引き受けられないとしても、せめて逆をやるのはやめられないか。理想を求めず、最低線だけを求める言い方が、かえって強く響きます。
この章句が説くこと
甘やかし批判語最低線敝屋恩売り
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