呻吟語 / 外篇・治道・愈いよ上れば則ち愈いよ聾瞽
愈上則愈聾瞽,其壅蔽者眾也。愈下則愈聰明,其見聞者真也故論見聞則君之知不如相,相之知不如監司,監司之知不如守令,守令之知不如民。論壅蔽,則守令蔽監司,監司蔽相,相蔽君。惜哉!愈下之真情不能使愈上者聞之也。
書き下し
愈いよ上れば則ち愈いよ聾瞽なり、其の壅蔽する者眾ければなり。愈いよ下れば則ち愈いよ聰明なり、其の見聞する者真なればなり。故に見聞を論ずれば則ち君の知は相に如かず、相の知は監司に如かず、監司の知は守令に如かず、守令の知は民に如かず。壅蔽を論ずれば、則ち守令は監司を蔽ひ、監司は相を蔽ひ、相は君を蔽ふ。惜しいかな。愈いよ下るの真情は、愈いよ上る者をして之を聞かしむる能はざるなり。
現代語訳
上へ行くほど耳が聞こえず目が見えなくなります。塞ぎ覆う者が多いからです。下へ行くほど耳も目も確かになります。見聞きするものが本物だからです。だから見聞で言えば、君の知は宰相に及ばず、宰相の知は監司に及ばず、監司の知は郡県の長に及ばず、郡県の長の知は民に及びません。塞ぎ覆うことで言えば、郡県の長は監司を覆い、監司は宰相を覆い、宰相は君を覆います。惜しいことです。下へ行くほど本当の事情が、上へ行く者に聞こえないのです。
解説
情報の質と位置を、逆相関で示します。上へ行くほど見えなくなり、下へ行くほど確かになる。理由は二つで、塞ぐ者の数と、見聞きするものの本物さです。そして二つの階梯が並べられます。知る順位は下から上へ、覆う順位は上から下へ。最も確かな情報を持つ民が、最も遠い。前に出てきた、塞ぐ者が亡国の罪の筆頭だという段の、構造的な説明になっています。
この章句が説くこと
上下情報逆相関壅蔽階梯
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『墨子』尚同中故に古者、聖王は唯だ壹に尚同を以て正長と為す。是れ上下、請謁して通を為す。上に隠事遺利有れば、下、得て之を利し、下に蓄怨積害有れば、上、得て之を除く。是を以て數千萬里の外に善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、鄉里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を賞す。數千萬里の外に不善を為す者有れば、其の室人未だ徧く知らず、郷里未だ徧く聞かざるに、天子、得て之を罰す。是を以て天下の人を舉げて皆な恐懼振動惕慄して、敢えて淫暴を為さず、曰く、「天子の視聴や神なり」と。先王の言に曰く、「神に非ざるなり。夫れ唯だ能く人の耳目をして己が視聴を助けしめ、人の吻をして己が言談を助けしめ、人の心をして己が思慮を助けしめ、人の股肱をして己が動作を助けしむればなり」と。之を視聴するを助くる者衆ければ、則ち其の聞見する所の者は逺し。之を言談するを助くる者衆ければ、則ち其の徳音の撫循する所の者は博し。之を思慮するを助くる者衆ければ、則ち其の謀慮は速やかに得らる。之を動作するを助くる者衆ければ、則ち其の事を舉ぐること速やかに成る。
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