呻吟語 / 外篇・廣喻・思ひを用ふること顧つて難からずや
夭喬之物利於水澤,土燥烈,天暵乾,固枯稿矣。然沃以鹵水則黃,沃以油漿則病,沃以沸湯則死,惟井水則生,又不如河水之王。雖然,倘浸漬汪洋,泥淖經月,惟水物則生,其他未有不死者。用思顧不難哉!
新字:夭喬之物利於水沢,土燥烈,天暵乾,固枯稿矣。然沃以鹵水則黄,沃以油漿則病,沃以沸湯則死,惟井水則生,又不如河水之王。雖然,倘浸漬汪洋,泥淖経月,惟水物則生,其他未有不死者。用思顧不難哉!
書き下し
夭喬の物は水澤に利あり。土燥烈にして、天暵乾せば、固より枯稿す。然れども沃ぐに鹵水を以てすれば則ち黃み、沃ぐに油漿を以てすれば則ち病み、沃ぐに沸湯を以てすれば則ち死す。惟だ井水のみ則ち生く。又た河水の王なるに如かず。然りと雖も、倘し浸漬汪洋として、泥淖月を經れば、惟だ水物のみ則ち生き、其の他未だ死せざる者有らず。思ひを用ふること顧つて難からずや。
現代語訳
若く伸びる植物は水と沢を好みます。土が乾き焼け、天が日照りになれば、当然枯れます。しかし塩水を注げば黄ばみ、油を注げば病み、熱湯を注げば死にます。ただ井戸水なら生き、さらに川の水のほうが優れています。とはいえ、もし水浸しになって泥に一月も漬かれば、水の生き物だけが生き、他は死なないものがありません。考えを用いるのは、かえって難しいことではないでしょうか。
解説
水を必要とする植物に、いろいろな液体を注いでみる思考実験です。塩水は黄ばませ、油は病ませ、熱湯は殺す。井戸水なら生き、川の水はさらによい。しかし水浸しが続けば結局死にます。必要なものでも、種類と量が合わなければ害になるわけです。良かれと思う手当てほど難しいという結論になっています。良かれと思う手当てほど難しい、という結論です。必要なものでも、合わなければ害になります。
この章句が説くこと
水種類量過剰手当て
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