呻吟語 / 外篇・治道・居官の五要
居官有五要:「休錯問一件事,休屈打一個人,休妄費一分財,休輕勞一夫力,休苟取一文錢。」
新字:居官有五要:「休錯問一件事,休屈打一個人,休妄費一分財,休軽労一夫力,休苟取一文銭。」
書き下し
官に居るに五要有り。「一件の事を錯り問ふこと休かれ。一個の人を屈打すること休かれ。一分の財を妄費すること休かれ。一夫の力を輕く勞すること休かれ。一文の錢を苟取すること休かれ」。
現代語訳
官に居るのに五つの要があります。一件の事を誤って裁くな。一人の人を曲げて打つな。一分の財をみだりに費やすな。一人の力を軽々しく労するな。一文の銭をいいかげんに取るな。
解説
官に居る者の心得を、五つの禁として並べます。誤審、冤罪、浪費、無駄な労役、不正な徴収。どれも一件、一人、一分、一文という最小単位で語られているのが特徴です。大きな悪事ではなく、一つ一つの小さな行為が対象になっています。数えられる形で示されているので、日々の点検表として使えます。実務の戒めとして最も具体的な一段です。
この章句が説くこと
五要誤審冤罪浪費点検
関連する章句
-
『学問のすゝめ』十六編・手近く独立を守ること・銭を制して銭に制せられずかかる夢中の世渡りに心を労し、身を役し、一年千円の歳入も、一月百円の月給も、遣い果たしてその跡を見ず、不幸にして家産歳入の路を失うか、または月給の縁に離るることあれば、気抜けのごとく、間抜けのごとく、家に残るものは無用の雑物、身に残るものは奢侈の習慣のみ。憐れと言うもなおおろかならずや。産を立つるは一身の独立を求むるの基なりとて心身を労しながら、その家産を処置するの際に、かえって家産のために制せられて独立の精神を失い尽くすとは、まさにこれを求むるの術をもってこれを失うものなり。余輩あえて守銭奴の行状を称誉するにあらざれども、ただ銭を用うるの法を工夫し、銭を制して銭に制せられず、毫も精神の独立を害することなからんを欲するのみ。
-
『呻吟語』外篇・治道・要他何用而今民窮し財盡くるの時に當たり、動もすれば礦稅の害を稱す。以為へらく事君父に幹り、之を諫むるも行はれずんば、總て無可奈何に付すと。吾且く吾輩の民を安んじ用を節して以て自ら便とする者に就きて之を言はん。飲食腹に入るは、三分の銀もて之を用ひて盡きず。而るに食前方丈は、總て暴殄に屬す。他を要して何の用ぞ。僕隸二人、三十里として肉食せざる無き者は、飯桌を程せず、他を要して何の用ぞ。轎扛人夫、吏書馬匹は、寬然として餘り有り。而るに鼓吹旌旗は、他を要して何の用ぞ。下に莞し上に簟し、公座圍裙は、盡く物采を章にせり。而るに滿房に氈を鋪くは、他を要して何の用ぞ。上司新たに到らば、須らく參謁すべし。而るに節壽の日、各州懸の幣帛下程、庭に充ち門に盈つるは、他を要して何の用ぞ。前呼後擁、百人を減ぜず、巡捕聽事、官吏を缺かず。而るに司道府官の交界送接、到る處に追隨するは、他を要して何の用ぞ。隨巡の司道、拜揖の外、筵を張り互ひに款し、期會遑あらず。而るに帶道の文卷盡く取りて抬隨し、帶道の書吏盡く人をして跟隨せしむるは、他を要して何の用ぞ。官官此の如く、在在此の如し。民間の節省、一歲盡く多し。此れ豈に朝廷之を令して此の如くならざるを得ざらんや。吾輩以て深く省みる可し。
-
『韓非子』亡徵第十五宮室臺榭陂池を好み、車服器玩好を事とし、百姓を罷露せしめ、貨財を煎靡する者は、亡ぶ可きなり。
-
『茶の本』第六章 花・西洋の社会における花の浪費西洋の社会における花の浪費は、東洋の宗匠の花の扱い方よりもさらに驚き入ったものである。舞踏室や宴会の席を飾るために日々切り取られ、翌日は投げ捨てられる花の数は、なかなか莫大なものに違いない。いっしょにつないだら一大陸を花輪で飾ることもできよう。このような、花の命を全く物とも思わぬことに比ぶれば、花の宗匠の罪は取るに足らないものである。彼は少なくとも自然の経済を重んじて、注意深い慮りをもってその犠牲者を選び、死後はその遺骸に敬意を表する。西洋においては、花を飾るのは富を表わす一時的美観の一部、すなわちその場の思いつきであるように思われる。これらの花は皆その騒ぎの済んだあとはどこへ行くのであろう。しおれた花が無情にも糞土の上に捨てられているのを見るほど、世にも哀れなものはない。
-
『学問のすゝめ』七編・国民の職分を論ず・思案にも及ばず快く運上を払うべき世上の有様を見るに、普請に金を費やす者あり、美服美食に力を尽くす者あり、はなはだしきは酒色のために銭を棄てて身代を傾くる者もあり、これらの費えをもって運上の高に比較しなば、もとより同日の話にあらず、不筋の金なればこそ一銭をも惜しむべけれども、道理において出だすべきはずのみならず、これを出だして安きものを買うべき銭なれば、思案にも及ばず快く運上を払うべきなり。
-
『後世への最大遺物』第一回・二百万ドルの墓先日その墓が成ったそうでございます。どんなに立派な墓であるかは知りませぬけれども、その計算に驚いた。二百万ドルかかったというのでございます。二百万ドルの金をかけて自分の墓を建てたのは、確かにキリスト教的の考えではございません。