呻吟語 / 内篇・修身・大いに相反する者は大いに相似たり
大相反者大相似,此理勢之自然也。故怒極則笑,喜極則悲。
書き下し
大いに相反する者は大いに相似たり。此れ理勢の自然なり。故に怒り極まれば則ち笑ひ、喜び極まれば則ち悲しむ。
現代語訳
大いに反対のものは、大いに似ています。これは理と勢いの自然です。だから怒りが極まれば笑いになり、喜びが極まれば悲しみになります。
解説
正反対のものが似ているという逆説を、感情の実例で示します。怒りの果てに笑いが出て、喜びの果てに涙が出る。誰もが経験していることなので、逆説がすぐ腑に落ちます。円環の一周が同じ点に戻るような見方で、前に出てきた、乾坤の尽きる所が姤復の始まる所だという段と同じ構えです。強く反発している相手ほど、自分に似ているということでもあります。円環の一周は、同じ点に戻ってくるのです。
この章句が説くこと
逆説感情極まり循環相似
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・談道・過ちは已發の後に在らず發して節に中たらざるは、過ち已發の後に在らず。
-
『呻吟語』内篇・應務・氣を使ふは最も事を害す氣を使ふは最も事を害し、心を使ふは最も理を害す。君子は事に臨みて心を平らかにし氣を易くす。
-
論語・雍也篇子、仲弓を謂いて曰く、「犁牛の子、騂くして且つ角あらば、用うること勿からんと欲すと雖も、山川其れ諸を舎てんや。」
-
孫子・謀攻篇将その忿に勝えずしてこれに蟻附すれば、士卒の三分の一を殺し、城抜けざる者、此れ攻の災なり。
-
論語・顔淵篇子張、徳を崇くし、惑いを辨ずるを問う。子曰く、「忠信を主とし、義に徙るは、徳を崇くするなり。之を愛しては其の生を欲し、之を悪みては其の死を欲す。既に其の生を欲し、又其の死を欲するは、是れ惑いなり。」誠に富を以てせず、亦た祇だ異を以てす。
-
論語・為政篇子夏孝を問う。子曰く、「色難し。事有れば弟子其の労に服し、酒食有れば先生に饌(まかな)う。曾て是を以て孝と為さんや。」